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第74話 『田舎の夜は静かすぎて、添い寝の音がバレる』

──夜。


田舎の空気は澄んでいて、虫の音さえもはっきり聞こえる。

それはつまり、“生活音も丸聞こえ”ということだ。


 


「……なんで、こんな布団の配置になってるんだ……?」


 


俺は布団に入った状態で、天井を見上げながら呟いた。


 


右隣──母の布団。

左隣──ヒロイン陣が「交代制」と称して順番に来るスペース。


 


(誰だよ、こんな地雷配置考えたの……)


 


もちろん、妹・幸香である。


 


「“母の目”というプレッシャーの中で育まれる愛こそ、真実なのです♥」

と言いながら、嬉々として布団を並べた。


 


──そして、深夜。


 


俺がウトウトとまどろんでいたそのときだった。


 


「……しーっ……」


 


そっと布団がめくられる気配。

音もなく滑り込んできたのは──


 


「よっ、と……お邪魔しまーす……」


 


歩美だった。


 


「お、おい、ま、まじか……ここ母さんの隣だぞ!?」


 


「大丈夫。寝てるから。ていうか、今夜は“勝負かける”って決めてたし」


 


(なにそのパワーワード!?)


 


さらに、数十秒後──


 


「……すみません。わたしも、ちょっとだけ……」


 


玲奈まで潜り込んできた。


 


「なんで同時に来るんだよ!?」


 


「“予約かぶり”ってやつかな」

「布団アプリに登録したんですけど……競合エラー……」


 


(そんな未来的なシステム使ってんじゃねぇよ!!)


 


 


 ***


 


俺の布団には今、左右から少女のぬくもりが迫っていた。


 


歩美の太ももが俺の足に絡まり、玲奈の指先がそっと胸元に触れる。


 


「ねぇ……幸喜。昔、こうしてくっついて寝たの……覚えてる?」


 


「私は、初めてなんです……こういうの……だから、記憶に焼き付けたくて……」


 


(お、俺の理性、限界ッ……!)


 


その瞬間だった。


 


布団の中から、くぐもった声が漏れた。


 


「……んっ……」


 


……あ、これまずい。

声、出てる。しかも俺じゃない。歩美だ。


 


「こ、声……! おい、おま……!」


 


「だ、だって……近い……し、苦しい……しっ……あんっ……」


 


(この喘ぎ声、隣の母の布団に、絶対聞こえてるやつ!!)


 


さらに──


 


ガラッ。


 


「……アンタたち、今……何してたの?」


 


──母、起床。


 


その場が、一瞬で氷河期に突入した。


 


 


 ***


 


「ねぇ? なんで布団が三人分、ひとつに合体してんの?」


 


母・静江は冷静に、恐ろしく静かに問いかけてきた。


 


「えっ……これはその……健康布団合体計画と申しますか……」


 


「わたしが夜風に当たってたら、足が冷えまして……」

「兄が心配だったので、“安全確認”だけ……」


 


「“んっ……”って声、出てたけど?」


 


──全滅。


 


その後、布団三人は並んで朝まで正座という刑を言い渡されることになる。


 


 


 ***


 


翌朝。


 


妹・幸香がにやにやと朝食の味噌汁をかき混ぜながら言った。


 


「まさか布団の中で“音声事件”起こすなんて……さすが先輩ヒロインズ♥」


 


歩美「うるさい……」

玲奈「穴があったら……また潜り込みたい……」


 


幸喜「それ絶対間違った意味で言ってる……」


 


母・静江は新聞をめくりながら、ひとこと。


 


「次また音立てたら、“録音して父方の仏壇に供える”からね」


 


全員、二度と音を立てないと誓った。

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