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第53話 『混浴は戦争──“湯けむり誘惑バトル”開幕』

ゴオオオオ……と響く湯気の音。


そして──沈黙。


 


俺は、混浴風呂の湯船の中で、

目を閉じて天を仰いでいた。


 


心は穏やかじゃない。


むしろ、理性は──


 


既に瀕死である。


 


(なんで……なんで俺の両脇に、タオル1枚の美少女がいるんだ……)


 


右には、湯に浸かる玲奈。

蒸気で曇った眼鏡越しに、俺をじっと見つめている。


 


左には、湯をすくいながら微笑む舞香。

金髪が湿り、肩に張りついて艶めかしい。


 


斜め前には、何故か無言で突っ伏してる歩美。


顔を赤くしながら、

「見せたら負け」と自らに言い聞かせているらしい。


 


そして浴槽の端──

タオルを巻いて正座する幸香。


 


「ふふん♥ これぞ“恋愛合宿の成果”ですね!」


 


 


 ***


 


混浴開始から、すでに15分。


全員、“偶然を装って”鉢合わせしたという設定でここにいるが──


その全員が、俺の周囲半径1メートル以内に密集している時点で、


偶然ではない。陰謀である。


 


「お、お兄ちゃん? のぼせてない?

あっ、顔真っ赤だぁ。おでこ、冷やしてあげよっか?」


 


幸香がすり寄ってくる。


あまりにも自然な流れで太ももが触れ、

俺は完全に**CPU使用率100%**で応答不能。


 


「ちょ、ちょっと妹! そこどきなさい!」


割り込んできたのは、歩美。


 


「兄妹で肌を寄せ合うなんて、非常識にも程が──

……って、なにそのタオルのずれ!? え、ちょ、わざとじゃないわよね!?」


 


「あらあら、これは戦争ですの?」


今度は舞香が立ち上がる。


お湯が滴るその肢体は、

もはやアニメの入浴作画そのもの。


 


「先に言っておきますが、わたくし、“見せたら勝ち”派ですわよ?」


 


「なら私は、“触れたら勝ち”派ですね」


玲奈が湯に手を入れながら、そっと俺の指先に触れ──


 


ビクンッ!!


 


「もぉぉぉぉぉやめてぇぇぇぇ!!!」


 


俺は叫んだ。


 


「もう!やめて!俺の理性はとっくにゼロよ!!

HP1! MP0! SAN値マイナスゥ!!」


 


 


 ***


 


幸香「……じゃあ、“誰がいちばん”って言って?」


歩美「言え!今ここで!!」


舞香「順番など不要です。本能に従いなさい」


玲奈「先輩の唇を、私にください──」


 


「ぎゃあああああああああああ!!!!!!!」


 


その瞬間、

俺の意識はぷつんと飛び──


 


豪快な“のぼせ気絶”を果たした。


 


ヒロインたちの誰かが叫ぶ。


「人工呼吸!?」「心臓マッサージ!?」「胸触らせる!?」


──やめてくれ、

せめて夢の中では静かに眠らせて……。


 


 


 ***


 


目を覚ましたのは、部屋の布団の中だった。


 


「お兄ちゃん……♡」


頬を撫でる声。


見上げると──


 


俺の枕を囲んで、

全員パジャマ姿で仁王立ちしていた。


 


「第2ラウンド、行きますか♥」

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