第52話 『ヒロイン合宿計画始動──妹プロデュースで地獄化』
土曜日の朝。
久慈川家のダイニングに集まった面々の顔ぶれは──
・妹(主催)
・幼なじみ(半ギレ)
・図書委員(無言)
・転校生(呆れ)
・そして、俺(死にそう)
「じゃあ改めて、恋愛バランス調整のための──合宿、始めますっ♥」
妹・久慈川幸香が、朝からテンションMAXで高らかに宣言した。
「合宿って……なに?」
俺は目を細める。
「兄が“全ヒロインに平等に愛される”ってのがルールなんでしょ?
だったら実地研修が必要でしょ。恋愛スキル確認合宿!」
「そんなの聞いたことないわよッ!?」
即座に立ち上がったのは、袋田歩美。
「温泉宿って何!? なにその“夜這い推奨”みたいな空気!?
そんな合宿、妹が企画していいわけ!? 保護者どこ!?」
「私が保護者♥」
「てめぇだよ!」
***
というわけで──
俺たちはやってきた。
茨城県某所、山の中にある和風旅館『湯けむり恋咲荘』。
チェックインを済ませ、案内された部屋は──
「……嘘だろ」
「はいっ!【兄+ヒロイン全員で一室】です♥」
俺の目の前に広がっていたのは、
広々とした和室に、五人分の布団が並んだ地獄の川の字ゾーンだった。
「……兄さんの寝位置は、中央。守ってね?」
「守るな!配置が暗黙の添い寝権じゃねぇか!!」
***
浴衣に着替えたヒロインたちが、
次々と部屋に戻ってくる。
まずは舞香。
胸元が開いた浴衣に身を包み、うちわを持って艶然と微笑む。
「日本の伝統衣装、侮れませんわね。……このままなら“合法的に添い寝”もあり得るのでは?」
続いて、玲奈。
しっかり帯を締めているが、
うなじから覗く白い肌が妙に色っぽい。
「……浴衣、どうですか?
先輩のために、選んできたんです。妹さんに監修されながら」
「幸香ァァァァァァ!!!!」
最後に、歩美がどすどす歩いてきた。
「もう!なんで全員似合ってんのよ!なんで私だけ“田舎の親戚感”が出るのよ!!」
それは……たぶん性格です。
***
そして夕食後──
問題の“混浴タイム”がやってきた。
「えっ、マジで混浴なの!?」
「マジです♥(妹)」
男湯と女湯の“仕切り戸”が開かれていて、
“自由に行き来してください”という旅館のご厚意(妹の工作)で成り立っていた。
「わ、私、行きます……!」
いの一番に飛び込んでいったのは玲奈。
「さすがに恥ずかしいけど……逃げたら負けよね!」
続いて舞香。
「はあ!?なんで私まで入るの!? 絶対に何か起きるわよ!!」
文句を言いながらも、歩美も浴衣を脱いでいく。
そして俺は──
脱衣所の隅で、タオルを握りしめていた。
(なにこれ……フラグしか立ってない)
(もう俺の理性、アホ毛みたいに浮いてる)
***
湯けむりの中、四人のヒロインと一人の男がひとつの湯船に揃った瞬間──
それは、合法ラッキースケベ合宿第一夜の始まりだった。
「ねえ、どこ見てるの?」
「ちょっと手、貸してくれない?」
「のぼせたふりして倒れたら、どうなるかな?」
(誰か助けてえええええええ!!!)




