第40話 『妹ルート封鎖戦線、発動』
──それは、文化祭直前のことだった。
つくば第一高校の図書室裏、人気のない廊下。
そこで集まったのは、4人の少女たち。
幼なじみ・袋田歩美。
図書委員・磐城玲奈。
転校生・舞香・A・C・リーヴス・天城。
そして、アニメ化を経て最強に妹化した──妹・久慈川幸香ではない。
そう──
「妹抜き」の、ヒロイン同盟。
歩美「……もう、限界よね。さすがにさ」
玲奈「文化祭で、“兄と指輪交換ステージ”を勝手に予約していた時点で、明確な“侵略行為”です」
舞香「放置していれば、このまま“婚姻届提出イベント”に進行する可能性もありますわ」
──全会一致。
このままでは、“妹ルート”がすべてを飲み込む。
現実が、ヒロインであるはずの彼女たちを飲み込み、
物語が妹の執着だけで塗りつぶされてしまう。
歩美は、小さく拳を握った。
「よし──始めましょう。
**『妹ルート封鎖戦線』、発動よ!!」
***
その日の放課後──
俺の家。リビング。
集められたヒロインたちと、俺は事態の説明を受けていた。
歩美「私たちは、“妹ルートの暴走”に危機感を抱いています」
舞香「これ以上、兄妹という関係を超えた干渉が続けば──作品のジャンルが崩壊します!」
玲奈「このままでは、ジャンルがラブコメから“倫理崩壊パラレルスイート”に移行しかねません」
俺「そこまでは言ってない!!! いや、わかるけど!」
歩美「というわけで──」
彼女はホワイトボードを出した。
【妹ルート封鎖作戦 概要】
① 学校内での接近禁止(半径3メートル以内禁止)
② 妹による記録媒体没収(スマホ・録音ペンなど)
③ 文化祭ステージでの単独行動阻止
④ “兄ラブ発言”の公共場抑制指導
⑤ 兄パンツ保管庫の強制開錠&廃棄(←!)
俺「ちょっと待って、最後のやつだけなんか重くない!? 俺の思い出が詰まってんだぞ!?」
玲奈「詰まってるのは、お兄さんの汗と皮脂です」
***
……そして、その夜。
妹・幸香は、全てを察していた。
リビングで1人、パンをかじりながら、
机の上に置かれたホワイトボードの写しを見て、彼女は呟いた。
「──ふぅん。ついに、“やる気”になったんだ」
誰に語るでもなく。
でも、その目は確かに、笑っていた。
「じゃあ……こっちも本気でいくね」
***
翌日。
文化祭準備中の校舎裏。
妹・幸香は、歩美・舞香・玲奈を前に現れた。
風が吹く。
スカートのすそが揺れ、彼女のロングヘアがふわりと舞う。
だがその笑顔は──
狂気の領域に踏み込みつつあった。
幸香「お姉さまたち、ルールなんて守るんだね。
私は、“好き”って気持ちにルールなんていらないと思ってた」
歩美「限度があるのよ」
舞香「“妹”という身分を盾に、好き放題してきた報いを受けていただきますわ」
玲奈「これは、ヒロインの尊厳と物語の秩序を守るための行動です」
幸香は、一歩前に出た。
そして──
「なら、“全員排除”するしかないね♥」
──闇落ち、宣言。
その目に映るのは、恋敵ではなかった。
ただの“障害物”。
“お兄ちゃん”との未来を邪魔する、ノイズ。
幸香「これから一人ずつ、記憶から消していく。
ふふ、もちろん比喩だよ? でも、“物語”って、書き換えられるんだよ」
俺(マズい……本当にマズいやつだこれ……)
──妹ルート。
それは、萌えの王道であり、同時に最強最悪のバグルートでもある。
そして今、
ついに──“妹vsヒロイン同盟”の全面戦争が始まろうとしていた。




