第38話 『兄のパンツ展覧会』
──その計画書を見た瞬間、俺の脳内はフリーズした。
【開催企画案】
『久慈川幸喜パンツ展覧会──布と記憶と、君への偏愛──』
会期:未定(文化祭 or 妹による単独開催)
会場案:旧美術室/学外ギャラリー(交渉中)
展示物:
・高校入学時の初下着(ポリエステル製・使用感強)
・勝負パンツ各種(ラノベ執筆日対応)
・布団内撮影映像ルーム(本人出演)
・香り付・体温残留パンツ(要冷蔵)
コンセプト:「兄の存在証明を、布で語る」
俺・久慈川幸喜(17)は、限界を迎えていた。
「俺の……青春が……パンツに……変換されようとしている……ッ」
机に突っ伏してうめいていると、ドアがバンッと開く。
「幸喜!! ちょっと聞いたんだけど!!」
「これはもうアウト通り越して犯罪ですわッッ!!!」
──現れたのは、幼なじみ・袋田歩美と、転校生・舞香・A・C・リーヴス・天城。
歩美の顔には怒りの鬼が宿り、
舞香の目は理性を超えた“王国の誇り”で燃えていた。
歩美「何よ“兄のパンツ展”って!! 馬鹿なの!? 妹、馬鹿なの!?!?」
舞香「国家によっては、処刑または布処分命令が下されますわ!!」
***
その数分後──
リビング。
“妹、事情聴取”が始まった。
中心には、計画書を前に満面の笑みを浮かべる妹・幸香。
幸香「えっへへ~♥ ようやく理解が追いついた?
これが、アニメ人気に乗ったブランディング展開だよ!」
歩美「バカじゃないの!?!?」
舞香「いやむしろ、恐怖を超えて芸術なのでは……」
俺「ちょっと待って、展示って何? 俺のパンツを、何? 額装して? 照明当てて? タイトルつけて? 来場者投票?」
幸香「うん♥ “兄の温もりグランプリ”も企画中だよ♪」
全員「やめろおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
***
そして翌日──
妹の“パンツ展”計画は、学内に漏れた。
なぜなら、既にチラシが刷られていたからだ。
【予告】
『パンツは語る。兄という名の芸術を──』
特別展示:“リアル兄使用済”コーナー開設
来場者特典:
・香水付きポストカード(妹自家調合)
・“兄の洗濯ばさみ”レプリカ
・朗読劇『パンツ、その愛の軌跡』
──校内騒然。
SNS炎上。
風紀委員激怒。
そして何より──
ヒロインたちの怒りが爆発。
玲奈「風紀委員会から、“展示申請却下”通達が届いています」
歩美「当然でしょ!!!!」
舞香「むしろ、あの申請が通ると想定してたのが信じられません!」
だが、幸香は――折れない。
むしろ、燃えていた。
「たとえ校内がダメでも──路上展示、個展、配信ギャラリー、方法はいくらでもあるよ♥」
俺「マジで誰か止めてくれえええええ!!!!」
***
その夜。
妹の部屋の前で、俺は思い切って声をかけた。
「幸香……頼む、パンツは、やめよう。
俺の青春を布にするな。俺は、俺なんだ。
お前の兄で、ラノベ作家で、普通に悩んでる高校生なんだよ……」
──扉の向こう。
しばらく、沈黙が続いた。
そして、小さく──本当に小さく、声が返ってきた。
「……でも、布だけが、残るんだよ」
***
【添えられていたパンツ展示リスト(幸香作)】
「初めて“お兄ちゃん”って呼んだ夜のパンツ」
「夏祭りで浴衣の下に履いてた兄のパンツ(※着替え)」
「ラノベ新人賞受賞翌朝・祝福パンツ」
「私が風邪ひいた日、お兄ちゃんが看病してくれた時の下着(兄の)」
──展示、断固拒否。
だが、戦いはまだ終わっていない。




