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第31話 『妹、目覚める──合法愛への執念』

──人は、承認によって狂う。


そして──

妹は、承認によって覚醒する。


 


 


 ***


 


「兄妹ラブ、マジでアリだと思う」

「リアル妹なのにここまで愛してくれるとか最高すぎる」

「幸香ちゃん、尊い。合法になれ」

「てか作者の妹が一番ヒロインしてる件」

「これは“妹独占ルート”突入フラグじゃね?」


 


──ネット掲示板《ラノ速!》

トレンド第3位スレッドタイトル:


【速報】『俺プロ』の“リアル妹”が可愛すぎて世界がざわつく件【尊死】


 


そこには──


・アニメ第5話の妹登場シーンGIF(照れ顔+「お兄ちゃんだーいすき♥」)

・ラジオ番組での妹による“お兄ちゃんの匂い講座”抜粋音声

・制作スタッフがSNSで投稿した「実在モデル」の洗濯物(=兄のパンツとタオル)らしき画像


 


──そして。


彼女は、その“スレッド”を、

一人、自室で**食い入るように読んでいた。


 


久慈川 幸香──

高校1年生。

ブラコン。

そして、“妹”という愛の役職に誇りを持つ少女。


 


「……あはっ」


 


パジャマ姿でベッドに寝転び、スマホ画面をスクロール。


笑っていた。


 


「ついに……時代が、私に追いついた♥」


 


 


 ***


 


翌朝──


俺、久慈川幸喜は違和感で目覚めた。


まず、右手が拘束されている。


そして、左手には筆ペンが握らされていた。


 


「……ん? これ、俺の名前……?」


 


起き上がると──


机の上には、“一枚の紙”が置かれていた。


 


【婚姻届(未来用)】

夫:久慈川 幸喜

妻:久慈川 幸香

※年齢は未来予測値、日付は「203×年予定」と記載あり


 


俺「…………………………は?」


 


 


 ***


 


キッチン。

朝食中。


パンとスクランブルエッグを食べながら、俺は尋ねた。


「なぁ幸香……朝起きたら“婚姻届”に名前が書かれてたんだけど、どういう……」


 


妹は、とろけるような笑顔で答えた。


 


「未来視よ♥」


 


「怖すぎるわ!!!!」


 


 


 ***


 


学校。昼休み。中庭のベンチ。


俺は、弁当を開けながら、ため息をついた。


(まさか、ここまで来るとは……)


 


確かに、最近の幸香は妙に調子が良かった。


アニメでの“妹ヒロイン”人気は上昇の一途。


SNSでも「幸香ルート希望」「妹ルートが王道」といった言葉が踊っている。


 


でも──


「兄の名前で“婚姻届”を書いて保管」は、さすがにアウトだろう。


 


そのとき。


スマホが震えた。


画面を見ると、渋谷(編集)からのLINE。


渋谷「“妹との婚姻届”の件、マジだったの?」

渋谷「制作サイド、特典小冊子のネタにしたいって言ってる。いいよね?」


 


「よくねぇよ!!!!」


 


 


 ***


 


放課後。帰宅途中の坂道。


隣を歩く幸香は、まるで何事もなかったように笑っていた。


 


「お兄ちゃん、私ね。ちゃんと考えたの。

“妹”っていう関係だけじゃ、もう足りないなって」


 


「……は?」


 


「私、昔からずっと思ってた。

“血がつながってるからこそ、こんなに好きになれる”って。

だって……誰より近くて、誰よりわかってくれて、誰より大事で」


 


風が吹いた。


制服のスカートが揺れる。


夕陽が、彼女の横顔を照らす。


 


「だったら、法的にも……心的にも……“全部”繋がった方が幸せでしょ?」


 


俺は、言葉を失った。


“妹”の笑顔が、まっすぐすぎて怖い。


そして、なにより──


 


その瞳に、一切の迷いがなかった。


 


 


 ***


 


夜。


布団の中で。


俺は、スマホを握りながら呟いた。


 


「……誰か、止めてくれ……俺の妹が、完全に覚醒した……」


 


そして、通知が鳴る。


渋谷から。


 


渋谷「“妹ルート”、今期No.1って言われてるぞ」

渋谷「視聴者は正直だな。お前、覚悟決めろ」


 


「俺の覚悟が、いま最も揺らいでるんだよ!!!!」

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