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第28話 『ラノベ原作炎上事件』

──炎は、突如として燃え上がる。


火種は、小さな呟きだった。


 


「てか『俺プロ』のヒロイン達って、モデルいるってマジ?」

「作者のリアル幼なじみとか妹が元ネタとか、逆にエグすぎん?」

「ていうかさ、あの“妹キャラ”、描写が妙に生々しいんだよな……」

「……リアル妹のパンツ干してる設定とか、正直ドン引き」


 


──Twitter、いやX(旧Twitter)は、あっという間に火の海と化した。


 


#俺プロ炎上

#妹の毛瓶問題

#地雷ヒロイン全員実在

#作者の性癖暴露本では?


 


俺のスマホは鳴りっぱなし。

通知は爆発。

メンションは地獄。

ファンアートと同人誌のアップロードが何故か加速。


 


──そして、編集部に電話がかかってきた。


しかも、某ネットラジオの人気番組から。


「原作者本人の口から“創作と現実の関係”について釈明してほしい」とのことです。


 


──俺、人生初のラジオ出演決定。


 


 


 ***


 


ラジオ収録当日。


スタジオの控室。


震える俺。

スーツを着せられた高校生。

控室の椅子にめり込むほど縮こまっている。


 


「し、渋谷さん……なぜ俺が……」


編集・渋谷(Tシャツに“炎上は燃料”の文字入り)はニヤニヤしている。


 


「そりゃあ、お前しかいないだろ? “炎上した理由そのもの”なんだから」


 


「この状況を肯定されたら俺、文化的に死にますよ!?」


 


「大丈夫。君が死んでも、物語が生きる。原作者ってそういうもんだろ?」


 


「地獄かよ!!!!」


 


 


 ***


 


ラジオ番組名:

『アニメ・ナイト・シンドローム』


パーソナリティ:

声優・九条ことね(俺の推し)

アシスタント:謎の芸人枠・森口くん(爆笑問題風)


テーマ:


「原作のリアルとフィクション──作者の“本音”に迫る夜」


 


開始10秒で地獄だった。


 


ことね「では、本日のゲストは……話題の問題作『俺プロ』の作者、久慈川幸喜先生です!」


 


俺「ど、どうも……ラノベ作家の久慈川です……高校生です……まだ未成年です……許してください……」


 


森口「すでに泣きそうですけど!? こっからバチバチ行きますよ〜!!」


 


ことね「さっそくですけど、“キャラのモデルって実在するんですか?”」


 


スタジオが凍りつく。


BGM:サスペンス調


 


俺「……え、えーと……“参考にした部分がないとは言いませんが”……!

けど、“完全な実在のコピーではない”とだけは……!」


 


ことね「でも、妹さんが“瓶に兄の毛を集めてる”って、本当なんですか?」


 


俺「それはっ! 誇張です!演出です!ギャグです!!(たぶん)」


 


森口「“兄の毛を保存してる妹”がギャグで済むラノベ、なかなかないですよ!? もはやドキュメンタリー!」


 


俺「勘弁してください……!!!」


 


──だが、ことねは静かに、マイクに囁いた。


 


「でも、私は好きですよ。こういう作品。

ちょっと変で、でも本気で“ヒロインたち”に向き合ってる感じ、しますから」


 


俺「……っ」


 


その言葉に、胸がギュッと締め付けられた。


……嬉しかった。


炎上したって、推しにそう言ってもらえるなら──俺は……


 


 


 ***


 


──だが、現実は甘くなかった。


ラジオ放送後。


俺のスマホには通知が止まらない。


DM、引用、リプライ、ハッシュタグ。


 


「久慈川先生、ラジオで“毛は演出”って言ってたけど、じゃあどこまでがリアルなん?」

「ヒロインたち、全員実在ってマジだった」

「あの“妹”、存在がR指定」


 


──その夜、家に帰ると。


俺の部屋に、待ち構えていたヒロインたち。


歩美・舞香・玲奈・幸香。


全員が椅子に座り、静かに、無言でこちらを見ていた。


 


歩美「……ラジオ、聞いたわよ」


舞香「“演出”って言い切ったわね。あたしたちとの思い出を」


玲奈「“瓶はギャグ”……それ、事実の否定ですよね」


幸香「“たぶん”って言ったの、聞き逃してないよ♥」


全員「──で、どういうつもり?」


 


俺「だれか助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

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