第24話 『パンツ回の台本、公開処刑』
──届いてしまった。
それは、郵便受けに収まっていた一通の封筒。
分厚く、赤いスタンプでこう書かれていた。
【アニメ第4話・決定稿台本】
俺・久慈川幸喜は、それを震える手で開封した。
(第4話か……。たしかこの回は、原作で“微エロ・日常・風呂あがり”というバランスの難しい回だったはず……)
その内容がどんなものか、正直──期待と不安が入り混じっていた。
でも、まさか。
まさか──パンツが、中心になるとは。
***
台本・冒頭部分:
【タイトル:第4話「パンツと兄と曇りのち地獄」】
【シーン1】
幼なじみヒロイン、風呂上がり。うっかりバスタオルを落とし、
主人公が慌てて手を伸ばす → 一緒にパンツまで脱げる。
【シーン2】
妹ヒロイン、寝込みにパンツを主人公の枕元に仕込む(謎の行動)
【シーン3】
図書委員ヒロイン、スカートが引っかかり、自らパンツを脱ごうとするが……
【シーン4】
転校生ヒロイン、文化交流と称して“脱がされイベント”をリクエストする
「──あっ、これ、俺、終わったな」
俺は台本をそっと閉じた。
いや、閉じるというより、“封印”に近かった。
この内容を、彼女たちに見せたら──
いや、もう手遅れだった。
「──ねぇ、それ、なに?」
背後から聞こえたのは、聞き慣れた4つの声。
すでに彼女たちは並んでいた。
・歩美(幼なじみ)
・幸香(妹)
・舞香(転校生)
・玲奈(図書委員)
歩美「隠しても無駄よ? 顔に“ヤバい内容です”って書いてあるから」
舞香「原作チェック、私たちの権利として認められているのでは?」
玲奈「台本のセリフ、私が校正します。全部、文学調に」
幸香「パンツって、私のことだよね?」
俺「やめろ! 読むな! 絶対読むなあああああああああ!!!!!」
……だが──
ページは、めくられた。
そして。
教室中に響いた、四重の絶叫。
「はああああああああああああああああああ!?!?」
***
修羅場タイム、開幕。
台本を机に広げ、ヒロインたちが囲んでいる。
俺は中心で正座。
歩美「なにこの“パンツ脱がされて、キャベツぶつける”って!?
私、どんな思考回路のキャラなの!? もしかして作者の願望!?」
玲奈「“図書室でスカート脱ぎかけて、主人公に『文学の自由です』と微笑む”って、
完全に公然猥褻罪じゃないですか」
舞香「“脱がされイベントを希望する外国の王女”って何よ!? 国際問題よ!? 戦争よ!? 正義の味方に刺されるわ!」
幸香「私は“兄のパンツを干し、風になびく様子を詩にする”って、もうこれ芸術でしょ? 天才でしょ? ねぇ褒めて♥」
全員「黙れ地雷」
俺「いや、あの、脚本家が……ちょっと“ノリすぎただけ”で……俺のせいじゃ……」
歩美「原作者としてチェック入れられたよね?」
舞香「このまま放送されたら、“変態原作”で世界中に知れ渡るのよ?」
玲奈「図書館での立場が崩壊します。許されない」
幸香「でも……視聴者が“この妹最高”って言ってくれたら……♥」
全員「だから黙れ地雷!!!」
***
翌日、1-A教室。
なぜか黒板の上に掲げられていた。
【パンツ描写全面撤廃要求署名:現在37名】
「“私たちはヒロインの尊厳を守りたい”」
~パンツは穿いてるからこそ尊い。脱げたらそれは違う。~
俺「違う……違うんだよ……パンツは、ただのパンツじゃないんだよ……」
そして、そのとき廊下の向こうから──
副担任・黒沢先生がやってきて、俺の肩に手を置いた。
「……久慈川。君、アニメ化されたんだってな。見たぞ、第4話の台本」
「せ、先生……」
「──エロいな」
「ちがっっっっっっっっっっう!!!!!!!!」
***
夜。
机の上には、“改訂台本案”を開いたPC。
画面の上には、ヒロインたちの添削メモが並ぶ。
・“脱がす”はダメ → “うっかり脱げる”もNG
・“風”を多用するのは不自然
・布団イベントはカット不可(by幸香)
「……俺、なんのためにラノベ作家やってんだろうな……」
スマホが鳴る。渋谷からだ。
渋谷「修正案読んだ。歩美と舞香のセリフ、“ギリ地上波通る範囲でエロい”って監督絶賛」
渋谷「ちなみにこのまま円盤特典になるかも。売れるぞ。良かったな」
「良くねぇよ!!!!!!」
──だが、確実に物語は進んでいる。
そして、“パンツ”ですら、青春の一部なのだ。
たぶん。




