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第15話 『妹の布団突撃事件──朝チュン未遂』

──ぬくもり。

──やわらかい。

──なにかが、胸元に……

──そして、呼吸音。耳元に、近い。


 


目を覚ました瞬間、俺は悟った。


 


「あっ……これ、ヤバいやつだ」


 


朝の日差しがカーテン越しに差し込む中。

俺、**久慈川幸喜くじかわこうき**は、自室のベッドの上で──


妹に抱きつかれていた。


 


名前は、久慈川幸香さちかわ

見た目は小柄な美少女。

中身は、毛フェチ・兄信仰・変態純愛者。


その彼女が──俺の胸に顔を埋めて、幸せそうに寝息を立てていた。


 


「……なんで!? いつから!? どこから入った!?」


 


慌てて飛び起きようとすると、細い腕がぎゅっと締め付けてくる。


 


「……お兄ちゃん……やっと起きた……♥」


 


「やめろぉぉぉぉおおおおおぉぉぉ!!!」


 


バチバチバチバチ──!


一気に脳内で“ヒロイン危機感知アラート”が鳴り響いた。


これは──


完全にアウト。


朝チュン未遂案件である。


 


 


 ***


 


数分後──


 


俺は、食卓で正座していた。


向かい側には、仁王立ちの3ヒロイン。


 


・袋田歩美(幼なじみ)

・舞香(転校生)

・磐城玲奈(図書委員)


 


全員、無言。

全員、目が座っている。


そして。


 


「──で?」


 


口を開いたのは歩美。


怒気が抑えられたその声が、一番怖い。


「説明、してもらおうかしら? あんたが今朝、“妹と一緒に寝てた件”について」


 


「ちちちちがうんだ!! 俺は何もしてない!! 本当に! 寝てただけ!起きたらこうなってたんだ!!」


 


「ふーん……“無意識”って、便利な言葉ねぇ……」


 


舞香が、刀のような視線を投げてくる。


 


「うちの国だったら……そうね、“妹と寝床を共にした罪”で、公開処刑が妥当かしら」


 


玲奈は冷静に言った。


「まずは火葬してから考えましょう。証拠隠滅も大事です」


 


俺「おまえら物騒すぎるだろ!!!???」


 


そんな中、当の本人──幸香は、パンをかじりながら無邪気に言った。


 


「お兄ちゃんの寝顔、癒された~♥」


 


「癒されたじゃねぇよ!! ていうか、どうやって俺の部屋入ったの!? カギ閉めてたぞ!?」


 


「合鍵持ってるし。“お兄ちゃんが疲れてるときは添い寝する”って、家族会議で決まったじゃない」


「いつ!? 俺その会議知らねぇぇぇぇ!!!」


 


歩美「それさ、もう通報レベルだと思う」


舞香「いや、処刑よ」


玲奈「もはや民族間戦争です」


 


 


 ***


 


状況が落ち着いたころ、俺は自室に逃げ帰っていた。


机に向かい、震える手でキーボードを叩く。


『妹が勝手に布団に潜り込んできた朝。

彼女の髪はシャンプーの匂いがして、俺は逃げられなかった。』


 


「……これ、“青春ラブコメ”じゃなくて、“修羅場ホラー”じゃね?」


 


スマホが鳴る。


渋谷(担当編集)からだった。


渋谷「布団イベント、読者ウケいいです。次巻、挿絵で“布団内密着図”いけます?」


 


「無理無理無理無理無理無理無理無理!!」


 


俺の悲鳴が部屋にこだまする。


だが、その声も──


廊下の外で立ち聞きしていたヒロインたちには、しっかり届いていた。


 


歩美「布団の次は、風呂よね」


舞香「シャワールーム、設計図押さえておくべきね」


玲奈「排水口に“毛”が溜まっていないか、定期的にチェックを」


幸香「ふふふ、私の勝ちだわ♥」


 


──修羅場は、寝ても冷めても、終わらない。

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