69 浴衣パーティ
ミシェル念願の浴衣パーティが開催された。
皆で浴衣を着て、晩御飯を食べる。
アルドルト、バトン、キースの三人が隠れ家に泊まることになった。
『せっかくだからバーベキューにしましょう』
ミシェルが提案したが首をかしげるバトンとアルドルト。屋台みたいに外で肉を焼いたり、野菜を焼いたして食べると説明。
『それならオレに任せろ』
話を聞いている間もバトンがニヤリと笑って聞き終わるやいなや作業を開始した。
準備をテキパキと手伝い、焼くのもお手の物で、なんだかんだ、ほとんど任せてしまった。
「とうもろこし焼けたぞ~」
「はーい!バトンの焼き方って絶妙で最高!」
「ありがとよ。ほい。やけどするなよ」
ニカッと笑うバトンを見て、楽しんでいるようでよかったとフィリティは安堵した。任せてしまったことを悪く思っていたからだ。
「あとでリンゴ焼いてやるな。うまいぞ」
パァアっと喜ぶフィリティを見て、バトンは相好を崩した。
「楽しみにしとけ」
「うん!」
ビィービィービィー
「なんだルーも食べたいのか?」
ビィービィービィービィービィー
「ルーは食いしん坊だからねぇ。ふふっ」
ほらよっ
生とうもろこしを芯と実の間にナイフを入れて削ぎ落とし、お皿に盛りつけて、数歩進んだところにある切り株に乗せる。
ぴょんぴょん、ちょんちょん跳ねながらとうもろこしまで到達したルー。バトンは、腰を下ろして、ルーに確認する。
「ルーなら食べれるよな?」
ツピィ―
元気よく返事をしたルーに微笑みながら火の番に戻る。
一連の流れがスムーズで手慣れていることにフィリティは感心した。
「なんか手慣れてるね。びっくりした」
「あぁ。じいさんにめちゃくちゃ叩き込まれたからな」
「へぇ、さすがキィじい」
「そんなことよりもっと食えよ。フィーはもっと肉付いたほうがいいぜ。細すぎ」
「っ!!なっ」
ニイっと歯を見せながら悪戯に笑うバトンを睨んで抗議するも全く効果はない。
(軽すぎて壊しちまいそう…)
図書室の事件のことを思い出しバトンは、自身を暗闇から助け出した少女のか弱さを知った。
「もう!キィじいに言ってくる!もう少しデリカシーって言葉覚えなさいね!」
「はっはっ」
普段はミシェルとルー、二人と一羽の暮らしだ。隠れ家に三人追加されたとなれば、何かと賑やかで楽しい。
この後、フィリティの告発により女心を理解しないやつのためにキースによる剣術指導が行われることになった。
バトンはもちろんだが、なぜか突き合わされてしまったアルドルト。
浴衣姿に剣の組み合わせは絶妙で、イケオジと化したキースの剣術の美しさは、別格だ。
日本人の感覚のあるミシェルには、刀ではないところが少し違和感がある。それでもやはり見栄えは良い。
ミシェルとフィリティでキースをベタ褒めすれば、若い二人がムキになるのは必然だった。
どうせだからとキースはフィリティの剣さばきも見ることにした。
浴衣姿で少し動き難さはあるものの、蝶が舞うように優雅さを持ち、しかし蜂が攻撃するかの如く鋭い突きが入ったりと男子二人に引けを取らない剣技を見せた。フィリティ専用のレイピアではないため、普段通りと行かずにフィリティはあまり納得のいく動きではなかった。
初めて見るフィリティの剣さばきに男子二人は息を呑み、見惚れた。
「フィーやるな」
「想像以上でした」
二人で顔を合わせ、この時ばかりは、気持ちの良い笑みを互いに浮かべる。指導が終わると拍手を送った。
「はぁ、はぁ、な、なに?二人とも!拍手とか恥ずかしいからっ!」
身体を動かして気分がよくなったフィリティは、息を切らし、恥ずかしいと言いながらも嬉しそうに笑っている。
キースは、若者三人を相手したのに息も上がらず剣先もピタッと止まる。
キースの正体を知るミシェルとなんとなく察しているアルドルトは、さすがと感心している。
「じじいは化け物か?」
バトンは悔しそうにつぶやき、フィリティは尊敬の念が増したらしく眼差しが眩しい。
「お前たち、まだまだだな。秋学期の剣術並びに魔術戦大会は、いいとこまで行けそうだ。ただし、上には上がいるからな心してかかれよ?」
「しょーひんあるのか?その方がやる気が上がるけどな!」
「お前さんは…はあ、まぁいい。確か例年優勝者には何かしら出とるな。剣術大会は、王城から装備補助金が出るんだったか。魔術戦大会は、魔石と身体強化の魔道具が出たはずだが…今年は創立記念の年で追加に褒美が出るはずだ。さて、どうなるか」
「確か、十年刻みで行われてましたよね?」
「アルは、隣国なのに物知りだな。そうだ。なんでも創立者が十の数字に縁があったみたいでな。ゲン担ぎらしいぞ」
「へぇ、そりゃぁ楽しみだ」
「皆、手を抜かずに頑張りなさいね!」
打ち合いを見ながら手応えを感じたミシェルは陽気に子どもたちの背を押した。
「ところで…どう?浴衣。なかなか良いでしょう?」
「はい。思ったよりも涼しくて着ていたら気持ちが落ち着くと言うか…背筋が伸びていいですね」
「オレもだ!特に袖が気に入った。手を入れてるとなんだか心が落ち着くわ」
「わしもなんだかんだ締め付けが少なくてな。気に入ってしまったわい」
「ふふっ。よかったわ。またやりましょう。次はアルくんの弟たちも一緒にね」
「はい。ありがとうございます」
「さて!パーティー最後はかき氷よ!」
「「かき氷!」」
「「かき氷?」」
あらあら。ふふっ。




