5 なりたいもの
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皆さんに楽しんで頂けるよう頑張りますm(_ _)m
今回少し短めです(汗)すいません(_ _;)
泣き声がアルールの家の中まで響いたのだろう。
アルールの母イネスが慌てた様子で家から飛び出してきた。すぐに目に入ったのは子どもたちを抱きしめているミシェルの姿。
「っ!!ミシェル!!子どもたちの泣き声がして…」
急ぎ足で玄関の階段を降りながら言うイネスを見て、今度はミシェルが慌てる。
「あぁ!イネスっ!だめよ!そんなに慌てては!お腹の子に障ってしまうわっ!子どもたちは大丈夫だから!ゆっくり来てちょうだい」
「子どもたちは大丈夫なのね!!よかった…って、あらあらフィーリちゃんの可愛い顔がぐちゃぐちゃだわ!」
イネスは、間もなく臨月を迎える妊婦さん。お腹にスイカが二玉ぐらい入っているんじゃないかと錯覚するほどに大きい。
「びっくりさせてしまってごめんなさい。さっきね…」
数分前の出来事を話し、教育していたのだと伝えるとイネスも納得したようにうんうんと聞いている。
「そうねぇ。そろそろアルもお兄ちゃんになるのだから、少しは加減を覚えてほしいところではあるの。けれど、難しいわよねぇ。六歳のロベールもまだまだだもの」
イネスは顎に手を置き、考え込むようにアルールの兄ロベールのことを思いながらしみじみ言う。
「そうなのよねぇ。まぁでも躾や教育は、大事だからね。頑張りましょう」
「ふぃーちゃんもがんばるー」
「アルだってできうようになりましぅ!」
子どもたちの言葉にミシェルとイネスは顔を見合わせ笑った。
「ささ!いつまでもお庭ではなく、お部屋に行きましょう。ミシェル、フィーリちゃんどうぞ上がって!美味しいお菓子を用意しているのよ」
「ふぃーちゃんたべたーい!」
「ふふっ。フィーちゃんは食いしん坊ね」
子供たちと玄関をくぐり、家へと招き入れる。子供たちは、おやつに夢中になり、大人は産まれてくる子どもの話しに花が咲いた。
程なくしてフィリティとアルールは、子ども部屋で遊びだした。
積み木をどちらが高く積めるか競い、次に騎士ごっこでどちらが誇り高い騎士に見えるかと決めポーズに挑戦する。二人で遊んだり、ひとり遊びになったりを入り混じりながら楽しい時間を過ごす。
「やー!えーい!ここでだぁああ!…って…あれ?ふぃーり?」
一人おままごとをしていたフィリティ。いつの間にか音が静かになり、アルールの声だけが部屋に響く。部屋の中は、積み木が転がり、布でできた果物や子供用のスプーンやフォークといったおままごと道具があちこちに散乱していた。
辺りをキョロキョロと見回して、フィリティを探す。
「ぼくはにんじゃだ」
なりきりごっこと絡めて、散乱したおもちゃをうまく避けながら、奥の隅にある布と木を使って作られたキッズテントハウスに向かう。二人の中で『ひみつきち』と呼ばれている場所。
そーっとドア代わりに垂れている布をまくり、中を覗くとフィリティはそこにいた。
「…ふぃりぃ?」
「…っすぅ…すぅぅ…」
小さい体をさらに縮め込ませて、まるでダンゴムシのように寝ている。
戦いごっこに夢中で気づかなかったアルールは、フィリティの近くに寄って、静かにしゃがみ込んだ。フィリティの寝顔を見ながら頭をポンポン…撫でるのではなく叩く。
まだまだ、加減のできない三歳児。そこには幼いながらに母から受けた愛情を第三者に与えようと見よう見真似で実行する。
自身より少し小さな女の子をじーっと見ながらポンポン…ふっと閃いた。
(そうだぁ!ぼくは…ふぃーりをまおう【ないと】になったら…うん!いいね!!きめた!!あとでおかぁしゃまにいおう)
戦いごっこの流れで閃いた男の子は、とんでもなく良い考えを思いついたとばかりに瞳をキラキラ輝かせ、自身の将来にわくわく想いを募らせた。
アルールは、お友達を敵から守る使命感が出たといったところです。