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45 八行の出来事

* * *


 無事に婚姻を結び、結婚したジョーカスとミシェル。


長男であるアルバートを産み、産後の巣立ちが危ぶまれたミシェル。ここで彼女の属性の一つ、聖属性を使い、ダメージを受けた部分を彼女自身で再構築した。


光属性の魔法よりも力が強く、確実に治すためには聖属性が有効だ。

ミシェルの中で、光属性魔法と聖属性魔法には明確な違いがあり、その時の判断で使い分けている。


物語の始まりとなる第二子の妊娠出産。

主人公だった男児は、女児として生まれた。

ジョーカスとミシェルは、やはり類似の世界であって「光と影の彷徨~心に虹を輝かせ~」ではないのでは?と考えるようになる。


考え方に転機が起きたのは、フィリティが三歳のとき。

他国に魔女の集団が内乱を引き起こすという出来事が起きた。理由は、魔女の身分を軽んじたこと。


「光と影の彷徨~心に虹を輝かせ~」のオープン二ングで語られる光と影の始まりの出来事としてたった八行の文のみで表現されたことだった。


ジョーカスは、影を他国へ潜り込ませ、事態の収集に翻弄した。

王太子である立場でどこまで出来るのか分からなかったが、国王である父は、ジョーカスのやりたいようにと采配してくれた。


目の当たりにした内乱は、あの八行で終われるような簡単なものではない。

何千何万の単位で人が死に魔女たちにも犠牲者は出た。


結果、国一つが無くなった。


魔女たちとの交渉になぜかジョーカスが指定された。

「光と影の彷徨~心に虹を輝かせ~」でもジョーカス・アンジュールの功績として語られていたが、語られただけだ。何かをどうしたから功績を得るまでの活躍になったのかは語られていない。


魔女たちの要求は、アンジュール国への亡命並びに魔女の非公表。魔女だけの隠れ里の環境の提供が主だった。


『私達は、普通の生活をただただ送りたいだけ。魔女だからと迫害し、差別し、時に拘束、監禁され、利用価値のある時だけ奴隷のように働かせられる。もうゴミ以下の生活は…耐えられないのだ』


『っ!!』


彼女たちの命をなんだと思っているのか。怒りで狂いそうになるのを耐えた。

一番苦しかったのは、当の本人たちだ。


『そなた等の苦しみ、怒り、嘆き…我には理解したくとも想像の範疇を超えることはできぬ。申し訳ない。だが、人の尊厳を粗末にし、人の命を無下にする悪魔のような生活から解放したい。さまざな要望はあるだろう。我が国にも可能かどうか話し合う必要はある。互いに尊重し、慈しむ関係を気づきたい』


そう口にするだけで彼女たちは泣いていた。


『内乱を起こせざるおえなかったことは、残念だ。失わなくていい命が失われたことは、償っていただきたい。

ただ……』


そこで一度、言葉を切った。彼女らは彼女らで限界だった。自死してもおかしくなかった。助けを叫びたくても叫べずにこうなってしまった。やり方は失敗だ。ならどうすればよかったのかと問われても俺にも正解がわらない。ただ一つだけ言えるのは…。


『…ありきたりな言葉だが贈りたい………生きててくれて、ありがとう』


長である人物が泣き崩れた。



* * *


それから魔女たちの町を作った。

俺の魔法も使って、早々に出来た。

隠れ里ということで、結界を作ることになり、俺の出入りは自由に出来るように魔力登録も忘れずに行う。


魔女とはいえ女性に限られたことではなく、男性もいるので、一見すればただの町だ。


一ヶ月ちょっとで作り上げた町はなかなかだった。

魔女たちも俺やミシェルには心を許してくれた。


俺が町を後にすると決まった日に長であるカルテッタに呼ばれた。

桃色の髪と桃色の瞳を持つカルテッタは、背が低く、小柄なミシェルでさえも彼女は見上げないと目を合わせられない背丈だ。

ジョーカスと対面した際、概ね感謝の言葉が多く、大分信頼されたようだった。

その信頼感からかカルテッタから驚愕の話を聞く。


『ジョーカス。貴方が以前から感じているこの世界は、その仮説で間違いない。そして、十五の歳を迎える第一王女の苦難もまたその通りになる。今から対策したほうがいい』


『っ!!な、なぜそれがわかるのだ?』


『あたいは魔女だよ?これでも二千の歳を超えてるんだ。馬鹿にしないでおくれ』


ニカッと悪戯な笑みを浮かべるカルテッタが続けた。


『多くの命と引き換えにこの暮らしを手に入れた私の罪だ。ジョーカスの力になって少しでも罪滅ぼしをさせて欲しい。何かあれば頼ってくれ。君なら彼奴等みたいなことはしないだろう?』


今にも泣きそうな顔で言われると胸が苦しい。


ミシェルがカルテッタに抱きつき、何かを言っていた。残念ながら俺には聞こえなかった。


『次、会いに来るときは、哉太のほうでもいいよ。堅苦しいのはなしにしようじゃないか』


『っ!!な、なっ…』


『だてに二千の歳を生きてないって言ってるだろうに!』


バシッと背中を叩かれた。

これで一つ頼れるところが出来たのはジョーカスにとって有り難かった。



* * *



「ま…まさか……僕が呼ばれたのは…」


「そのまさか…で良いだろう。フィーが狙われている」


「ッ!!?」


「どういうことですかッ!?」


「アルバート、お主の気持ちもわからなくないが王太子であるのだから、そのように声を荒げるでない。座りなさい」



「これが落ち着いていられますかっ!?」


「これから話す内容の方がお主らに衝撃を与えると言える。フィーが狙われていると言っただけのうわべだけでそう取り乱すようでは、この先の話は出来ぬ」


「アルバート義兄さま!まずは…落ち着きましょう」


「だから…その呼び方は早いって」


アルバートは、腰を下ろし険しい顔でジョーカスを見つめる。見つめるよりも睨むに近い。


「で?父さんどういうことですか?」


「僕からも詳細をお願いします」


「ふむ。どこから話をしたものかと悩んでいるが…」


そこからまず、ジョルテクス王国の他にもう一つの隣国シメリアンテ国。

シメリアンテ国は、魔術に特化した国であり、闇の魔術を秘密裏に研究している。


フィリティが生まれた同時刻に生まれた者がいる。闇魔法に特化した《魔の子》とシメリアンテ国では呼んでいるらしい。

魔の子の誕生により、闇の魔術と組み合わせた現代魔法を使い、新たな技法で古代に無くなったとされる禁術をも超える闇魔術を生み出す。この世界に放つとされたバッドエンドだ。バッドエンドを迎えると闇の時代が始まるとされている。


フィリティは、その禁術に唯一対抗できる力を王立学園入学時に開花させ、シメリアンテ国から狙われる。


「光と影の彷徨~心に虹を輝かせ~」の世界では、フィリティは男児であり敵も男だった。フィリティが女児で生まれたのは、これまでジョーカスとミシェルで変えてきた行いが影響したのではと考えられている。


年月が経ち友好関係を気づいてきた魔女の隠れ里でも魔女にしか話せないことをイレギュラーな存在であるジョーカスとミシェルには伝えて良いこととした。

予知夢のような未来視が出来る魔女からの助言を聞くためだ。


未来とは分岐次第で無限大である。その都度未来が変わるのは日常茶飯事であるらしい。

その中で今まで変わらない未来がある。

フィリティが何者かに狙われ死を予感させる出来事が起こること。


アルドルトには、フィリティが王立学園入学の時から側で見守ってほしいと考えていた。

フィリティの力が開花するのは入学していつ頃になるのか…未来視ですらマチマチなのだとか。

ある未来には、開花できないで命を散らしたこともあった。


「「っ!!」」


アルドルトとアルバートが二人で息を呑む。

フィリティがこの世から居なくなる…。そんなこと想像できない。動揺を隠すことすら忘れてしまった。


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