24 あなたはだれなの
「ただいま」
アルールは、自身の家に帰ってきた。
冬の国境は、陽が落ちるのが早いから十五時には、フィリティの家を出て一本道を帰る。
今日もおばさんが作ったグラタンは最高だった。
おばさんに出会わなければグラタンという食べ物を知らなかっただろうなぁと思う。
おばさんの作り出す料理は、何もかもが初めて見るものばかりで大好きだ。
『お米を見つけるのが私の使命ね!』
たまにおばさんがお米とやらを探していると聞くけれど、お米を知らないので楽しみにするしかない。
「おかえり兄さん!!ぼくねっ!今日、雪合戦をしたよ!マルセスに一回も当てられなかったんだ!」
「いやっ!一回はあたっただろうっ!!ぼくだってパトリックに負けないように壁をつくったんだからっ!」
パトリックとマルセスは、もうすぐ十歳の弟だ。
双子なだけあって思考も似ているし、たまにリンクする。それが僕には理解のできない世界で時々うらやましいと思う。
「怪我しない程度にほどほどにやるんだぞ」
ガシガシと二人の頭を撫でた。
フィーリには絶対にしない撫で方だ。
「ところで、母さんはどこにいる?」
「「部屋で刺繍をしているよ!」」
「ありがとう。ちょっと話があるから行ってくるよ」
僕は、階段を登って母さんのいる部屋の前に来た。
コンコンコンッと、扉を叩くと中から母さんの返事が返ってくる。いつもの優しい声で僕はそれだけで心が温まるんだ。
「母さんごめん。ちょっといい?」
扉を開かずに声をかける。だいたい数秒置いて扉を開けて母さんが顔をだす。
「どうぞ~。あら!アルったら顔が赤いわ。外はそんなに冷えているのね」
「大丈夫だよ。いつものことだから。ちょっと走ったのもあって、身体はあったかいから」
「そう。そこに座って。温かい紅茶でもいれようかしらね。ふふ。」
ソファの脇にある腰ぐらいの高さの丸い机にティーセットがあった。母さんお気に入りのティーセットだ。
魔法で母さんがお湯を作り、僕のためにお茶を入れてくれた。
「それで、なあに?」
母さんの優しい瞳が僕に向けられる。頭の中はどう切り出して話そうか、そのことばかりでどんどん身体が硬くなっていくのを自覚するけれど、どうすることもできなかった。
「四月からの学園のことなんだけどさ…」
それから僕は、四月からの王立学園に入学した後、一年後にアンジュール国への留学をお願いした。
「やっとね」
待っていたのよと続きそうな短い返事に母さんが微笑んで僕を見据えた。
「フィーリちゃんが好きなのよね?」
「………」
好きなんだ。ずーーっとずっと前から。
だから…
「フィーリのことが知りたい…」
僕が知っているのは、髪色を変えていること。
所作がとても綺麗だということ。
ここではない所に本当の住む場所があること、それぐらいだ。
「知ってるんだ…フィーリが僕と同じ髪色を隠していることを……僕は知っている」
部屋の静けさがやけに冷たく感じたけれど、僕は引くわけにはいかないんだ。
「だから…教えて。母さん。フィーリは…何ものなの?」
* * *
アルが緊張した様子で部屋を訪ねてきた。
いつもなら弟たちとそのまま遊びに付き合って夕飯を迎えるのに、今日はなんだか思い詰めている?感じかしら?
(フィーリちゃんと何かあったのかしら?もしかして振られちゃった!?)
私は、どんな内容が飛び出してくるのかと内心では、ドキドキしていた。
息子は一途で本当に彼女をずーーっと好きで、好きというよりももっと深い感じなの。
《愛している》といっても過言ではないのではと。
(どんどん重くなってくる愛にとうとうその時が来たのかしら?)
「それで、なあに?」
平常心を装って切り出してみたわ。ここは王妃ですもの、得意よ。
ミシェルが王妃になるという知らせを受けて、なぜかジョルテクス国王も乗り気になってしまってお義父さんが王位を夫に渡してしまったわ。おかげで予定よりも早く私も王妃の座に着いてしまったの。今日ここに来るまでもいろいろ仕事を終わらせて、やっと来れたわ。休息は大事だもの。
「四月からの学園のことなんだけどさ…」
んん?王立学園の話?
あぁ~フィーリちゃんは来年の入学だったわね。ミシェルもアンジュール国に留学させないの?なんてお伺いが来てたわ。
私たち夫婦はそのつもりだったからもう手続きに必要な書類はそろっているのよね。
本人のサインだけが空欄の状態よ。
ジョルテクス王国に来てもらってもいいんだけど、そうすると学年が変わっちゃうのよね。
それじゃぁ意味がなくって駄目なのよね。
ミシェルというよりジョーカス殿下のほうが積極的に来てほしいっておっしゃっていたわ。
やっぱり娘に変な虫が近寄るのが嫌なのかしらね。
私もフィーリちゃんにアル以外の男が寄ってくるのは気分がよくないわ。
息子推しなんですもの。
いつアルから言ってくるのかしらってずーと気になっていたのよ。
思わず言ってしまったわ。
「やっとね」
アルったらそんなにびっくりしなくていいのよ。
真っ赤な顔をさらに真っ赤にしちゃって、可愛いわ!
「フィーリちゃんが好きなのよね?」
一応、確認しとかないとね。
どう見てもフィーリラブ♡って塊なのだけど、一応ね。本人から聞きましょう。
「フィーリのことが知りたい…」
あら…好きかどうかの返事はしてくれないのね。
一番初めに伝えるのは、彼女へってことかしら。ふふ。なんて一途で健気なの!
「知ってるんだ…フィーリが僕と同じ髪色を隠していることを…僕は知っている」
いつ?いつから知っていたの?
まぁあんなに一緒にいたらいつかはバレるかもしれないとは思っていたけれど。
フィーリちゃんはガードが堅いからこれは寝込みでも襲ったかしら?
これはちゃんと状況を知っておかなくちゃね。
「だから…教えて。母さん。フィーリは…何ものなの?」
《あなたと同じ王族です》って言ったらどう思うかしら?もう気づいていたかしら?
ん~素直に教えちゃうのもなんだかつまらないし、そうねぇ~
条 件 は付けときましょうかね!




