目覚め
ヴァイオレットが謎の男によって姿を消した頃、国王アレクサンドロスはエリザの自室にやってきていた
従魔不死鳥の力によって生き返ることができたエリザだが、すぐに目を覚ますことはなかったのでこうしてベッドで寝ているエリザの顔を見にちょくちょく部屋に訪れていた
『エリザ……』
いつものように手を握りながら目を覚ますのを待っていると、エリザの指がピクリと動いたのを感じた
魔闘大会の日からずっと意識を失ったままだったエリザがようやく目を覚ましたのだ
『ん……』
『おぉ……!目を覚ましたかエリザ』
『お父様……ここは……私の部屋?確か魔闘大会の決勝でヴァイオレットさんと試合するところまでは覚えているんですがそこからの記憶がなくて。私は何故自室で寝ているんでしょうか』
『やはり記憶にないか……お前はそのヴァイオレットという女に刺されて一度命を落としていたのだ。しかしお前が使役していた従魔の力によって生き延びたのだ』
『ヴァイオレットさんが……私を?何かの間違いではないのですか?あの方は以前私を助けてくれたことがあるのにそんな事をするとは思いません』
目を覚ましたエリザはその時ちょうどその場に居合わせた国王から説明を受けたが、自分が一度死んだことやその犯人がヴァイオレットだったという事実を瞬時に受け入れることができなかった
『信じられないと思うかもしれないが真実だ。証拠もしっかりとあるし疑いようがない』
『お、お父様一つだけお聞かせください。ヴァイオレットさんはどうなるのでしょうか?』
『あの者はお前が倒れた後監獄に収容されたが現在己の罪から逃れようと脱獄し逃走中だ』
『そんな……』
『ないとは思うが念の為再び襲撃されぬよう城の警備を強化しておく。今は傷が綺麗に無くなっているとはいえまだ体調は万全ではないし突然のことで混乱しているだろう。気持ちの整理をつける為にも今はとにかくゆっくり休みなさい』
『……はい』
それだけ言うとはエリザの部屋をあとにした
アレクサンドロスはすれ違った給仕にエリザが目を覚ましたことを伝え、食べられるものを作るように命じてから自室へと向かった
自室前に到着し扉に手をかける。するとそこに一人の人物が声をかけてきた
『国王様、ご報告にあがりました』
『アレクか』
声をかけてきたのはエリザの側近であるアレク
アレクサンドロスはアレクを見ると周りを確認した後に語りかけてきた
『ここで話すのもなんだ、部屋で話をするとしよう』
『畏まりました』
ご拝読いただきありがとうございます!
ブクマ、評価感想等々頂けると励みになります
隔日投稿していますのでよろしければ次回もよろしくお願いします!