檻の中
王女殺しの疑いをかけられたヴァイオレットは、麻の袋のような物で顔を覆われたまま兵士の言うことに従い歩く
暫く階段を下っていき扉が開かれる音がすると、そこで袋が取られる
やって来たのは犯罪者を閉じ込めておく収監所だった
檻が開かれるとヴァイオレットはそこに蹴りで入れられる
『ちょっと、あんまり乱暴にしないでよ』
『黙れ、ここで大人しくしていろ。少しでも妙なことをしたら罪が重くなると思え』
まるで自分がもう犯人だと決めつけているかのような口ぶり
不満気な態度で接するが兵士はそれを無視して手首妙な枷をつけてきた
その枷がつけられた途端、ヴァイオレットはもの凄い脱力感に襲われた
『なにこれ、なんだか凄く怠いんだけど……』
『枷をつけられた者の能力を著しく低下させ抵抗できなくさせる魔道具だ。それをつけておけば逃げようなんて思わないだろ』
兵士の言う通り力が入らないし魔力を込めようとしても上手く込められない
今のヴァイオレットはそこら辺にいる一般人と同じ位のレベルまで能力が低下していた
ヴァイオレットに枷を嵌め牢獄に鍵を掛けると、見張り役の兵士一人を残して他は扉の向こうへと消えていった
蝋燭の明かりだけの薄暗い部屋、時間の流れも分からず連れて来られてからどれ位の時間が経っただろう
大会のことやエリザの安否等色々懸念はあったが、空腹が邪魔をして考えが纏まらないヴァイオレット
『お腹減った……ねぇ、ご飯は出ないの?』
『出るわけないだろ。お前自分の立場を理解してるのか?王女様殺しの疑いで閉じ込められてるってのにどんな神経してんだ』
見張りをしている兵士が呆れたような声で告げてくる
どうすることもできないヴァイオレットは回らない頭でこれからどうなるのかを思案した
気づけばそのまま眠りについてしまったのか、最初の見張り役の男から別の見張り役に交代していた
部屋に響き渡る腹の音。町で食べた料理を思い出して空腹を紛らわそうとするが、逆効果で更に腹の音が大きくなる
そうして空腹で食事の事しか考えられなくなった頃、入口の方から数人こちらにやって来る足音が聞こえてきた
扉が開かれ外の明るさに目をやられていると、中に入ってきた兵士数人がヴァイオレットの前で止まり声をかけてきた
『来い、尋問の時間だ』
それだけ言うと兵士の一人が牢屋の鍵を開け、行きのように顔に袋を被せると枷に縄をつけて引っ張ってきた
『あんまり強く引っ張らないでよ』
『口答えするな、いいか。これからいくつか貴様に質問をする事になるが聞かれたことには素直に答えろよ。こちらが少しでも嘘をついているようだと判断したら貴様は即極刑だ。分かったな』
『うっ……はい……』
とにかく正直に話し自分が無実だと訴えれば相手も分かってくれるだろう
この時のヴァイオレットは軽い気持ちでそんな風に考えていた
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