試合後の二人
突如シェリアを襲った謎の生物、その正体は狐の姿をした魔物だった
その魔物には見覚えがあり、以前従魔召喚を行った時にミーシャが召喚したあの魔物で間違いない
『ミーシャの奴、一体いつ従魔を召喚していたんだ?というかあの魔物はどこから現れたんだ』
『あの魔物はシャドウフォックス、影の中に姿を隠して奇襲を仕掛けてくる魔物ね。恐らく最後闇雲に投げていたように見えたあの床板、あの瞬間に従魔を召喚して床板の影に潜ませシェリアに接近させていたのよ。それで相手の意識が完全にミーシャに向いた時を狙ってシェリアを襲わせたのね』
シェリアが呪詛魔法を発するよりも早くシャドウフォックスの牙はシェリアの喉元といつでも噛み千切れる準備が出来ており、フィオーレも手出しができない
この展開を想定できていなかったシェリアにここから挽回する手はなく、降参の意志を審判に伝えた
『私の……負けです』
『勝者!ミーシャ・オルネシア!』
試合は圧倒的にシェリアの方が優位に進んでいたが、一瞬の隙が今回の勝敗を分けることとなった
試合に勝利したものの重傷度ではミーシャの方が酷かった為ミーシャは医務室へ
ヴァイオレットは先に敗北してしまったシェリアの元へと行くことにした
『シェリアちゃん』
『アッ……』
『あんな魔法使えるなんて凄いね!結果は残念だったけど……シェリアちゃんも強かった!』
『…………』
励まそうとしているヴァイオレットに対して口をパクパクとして何かを伝えようとしているシェリア
緊張して声が出ないような素振りをしているが、以前のそれとは違うように見えた
シェリアは困った挙句ヴァイオレットに耳を貸すようジェスチャーで促した
『どうしたの?』
『ゴニョゴニョ……』
『えっ?久しぶりに大きな声を出したから声が出なくなっちゃった?』
ヴァイオレットが聞き返すとシェリアは小さく頷く
普段出さないような声で相手に伝えなくてはいけないので、あの魔法を使用した後は毎回声が出なくなってしまうらしい
シェリアを励まそうとしていたが、本人はそこまで落ち込んでいる様子はなかった
『自分なりに出し切ったつもりだから?そっか、お疲れ様シェリアちゃん』
シェリアと合流した後共にミーシャがいる医務室へと向かった
中に入ると既に治療を終えたミーシャがベッドに座っていた
『ヴァイオレット、それにシェリアも』
『ミーシャちゃん、決勝進出おめでとう』
『……!』
『?シェリアはどうしたの?』
『思い切り声を出したから声が出なくなっちゃったみたい。ありがとうございましただって』
『そうなの、こちらこそ。殆ど負けてたようなものだけどね』
『最後まで諦めなかったからだよ。二人共凄かったよ』
『まぁ反省するのは決勝が終わってからね。恐らく次の相手はアレクでしょうし気合いを入れ直さないと』
反対のブロックにいたアレクもまた全ての試合を無傷で勝ち上がってきている
決勝もきっと厳しい試合になるはず。シェリアとの試合でかなり疲労しただろうし今は少しでも回復に努めた方が賢明だろう
そう思っていたが、医務室にやってきたレイナの報告でヴァイオレット達の予想は裏切られることとなった
『大変よ!アレクが試合を棄権したわ!』
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