卵の正体は
従魔召喚の儀で謎の卵を召喚してしまったヴァイオレットは卵を孵す為、とりあえず卵を持ち歩くことにした
『この卵いつ孵るんだろう?ずっと温めておいてあげないと生まれてこないよね』
『鶏の卵だと大体二、三週間位だったような気がするけどこれほど大きいと参考にならないわね』
『えーそんなにかかるの?それまでずっと離れられないなんて』
四六時中卵にかかりっきりにならなくてはいけないとは中々骨が折れる
それからヴァイオレットは朝から晩まで、学校に行っている間もひたすら卵を温め続けた
卵を一定の温度で温めてくれる部屋があり授業中はそこに入れるようにとケーニッヒや他の教師から注意を受けたが、ヴァイオレットは自分の手で直接温めてあげたかったので頑としてそれを譲らなかった
そして時々卵が動いてはどんな魔物が生まれてくるのかと心躍らせながら卵を温め続けて二週間ほどが経ったある日の深夜、その時は突然やってきた
いつもより激しく動く卵にコツコツという何かを叩く音でヴァイオレットは目を覚ます
『んぅ……あっ!卵にヒビが!ミーシャちゃんミーシャちゃん!』
『なによこんな時間に……』
『見て!卵が!』
『本当だ、もうじき生まれてくるみたいね』
『何が生まれてくるのか楽しみだなぁ』
徐々に殻にヒビが広がっていく
今か今かと姿を現すのを待っていると卵が半分に割れ、中にいた魔物が姿を現した
その魔物は背中に翼、そしてトカゲのような尻尾を生やし、ヴァイオレットが少し前まで一緒に暮らしていたイグニスと全く同じ姿をしていた
『ど、ドラゴン!?』
予想だにしない魔物の登場を前にミーシャは驚きを露わにする
サイズこそ小さいが紛うことなき竜、驚くのも無理はない
ヴァイオレットには馴染みのある姿だが、通常竜は人の前に滅多に現れることはない
畏怖の対象としても恐れられている為ミーシャは部屋の隅まで避難していた
竜はキョロキョロと辺りを見渡し、ヴァイオレットの方に目を向け見つめ始めると鳴き声をあげた
『ピューイ!』
『可愛いー!やっぱりまだ赤ちゃんだから言葉は喋れないのかな?』
『ど、ドラゴンって喋れるの?』
『あ、あーどうだったかな?』
『ピュイピュイ!』
『そうだ、契約をしなくちゃいけないんだよね。ねぇねぇ私と契約してくれる?』
『ピュイ?』
『ヴァイオレット、そのドラゴンとの契約はどうやらもう終わってるみたいよ』
『えっ?あっ本当だいつの間に』
竜の体を見てみると既に契約完了の証となる紋様が現れていた
まだ生まれたばかりだというのに翼を必死に動かしてヴァイオレットの元に近寄ってくる子竜は実に可愛らしい
周りより少し遅れる形となったが、こうしてヴァイオレットも他の生徒と同様従魔を契約を済ませることができた
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