従魔召喚
ヴァイオレットの口から思わず零れてしまった言葉に周囲が押し黙る
ミュゼルの方に視線を向けてみるとわなわなと肩を震わせていた
また何かまずいことを言ってしまったのかと危惧していると、ミュゼルがヴァイオレットの前までやってきてつま先立ちでキッと睨みつけてきた
しかしその行為も幼さ故か全く怖くはなかった
『お主中々いい度胸をしているな』
『もしかして私何か失礼な事言っちゃった?』
『妾はな子供扱いされるのが大嫌いなんじゃ』
『でも子供だよね?』
『ムキー!だから子供扱いをするんじゃない!妾はもう立派な大人レディーなんじゃぞ!』
『レディーって……』
ヴァイオレットの言葉を受けて地団駄を踏むミュゼル
これほどまでに行動とセリフが一致しないのも中々見たことがない
もしかしてこの変わった口調も大人っぽくみせるようにわざとなのだろうか?
すると喚き続けていたミュゼルはヴァイオレットに向けて指を差し涙目で告げてきた
『こうなったらお主と勝負して妾の実力を思い知らせてやる!』
『勝負?』
『ちょ団長、生徒相手にそこまでムキにならなくても……勝負って怪我でもさせたらどうするんですか』
『安心しろ、勝負といっても今日行う予定だった従魔召喚でだ』
『従魔召喚?』
従魔召喚とは異界に存在する魔物をこちらの世界に呼び出すという召喚魔法
どうやらそれでミュゼルと勝負をするらしい
『私より強い従魔を出してみろ!出来なかったら私を小さいと言ったこと謝ってもらうぞ!』
『えぇ……また勝負しなくちゃいけないの?面倒だし私が悪かったから謝るよ。ごめんね団長さん』
『それじゃあ妾の気が済まないんじゃ!お主に力の差を見せつけて妾の実力を思い知らせてやらないと気が済まないんじゃ!』
理由が完全に子供で正直相手にするのが面倒だったが、断ったところで引き下がる気配もないのでヴァイオレットは仕方なく勝負に乗ることにした
従魔の召喚をするにはまず魔法陣を書かなくてならない
あちらの世界から呼ぶ為に必要らしく更に詠唱をする必要もあるのだとか
今は簡略化されているが昔は一つの魔法を使うのにも魔法陣を書き長文の詠唱をする必要があった
従魔召喚もその一つで普通の魔法のように簡単にはいかないようだ
各々が教わった通りの魔法陣を書いていき、そこへ魔力を込め詠唱を行っていった
『異界に棲まいし魔の者よ、魔の力を糧にし我の呼び声に応え顕現せよ』
ミーシャが従魔の召喚の儀を行う。すると魔法陣が光り出しそこから狐の子供の様な魔物が現れた
『キュキュキュー!』
『これが私の従魔?か、可愛い……』
『召喚が成功したら契約をするんだ。魔物によって契約方法は異なるが……そいつはもうお前さんのことを気に入ってるみたいだし大丈夫そうだな』
『あなた私と契約してくれる?』
『キュー!』
ミーシャの言葉に狐の魔物が応えると契約完了の証である紋様が魔物に刻まれた
契約が完了すればいちいち魔法陣を書く必要もなくなり呼びたい時にすぐ呼べるようになる
『さぁ次はお主の番だ。妾より優れた従魔を召喚できるかな?』
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