退屈な社交界
無事に王位継承を済ませ晴れて正式にクレイス王国の王となったエリザ
それを祝って王都では一週間に渡って盛大な祭りが行われた
ヴァイオレット達の方はというと城で行われるパーティに参加することとなった
本当は民衆に紛れて祭りに参加したいところだったが、正体がバレると大騒ぎになってしまうので祭りに行くのは諦めるしかなかった
だが城でのパーティはパーティで参加者の殆どが貴族達で気を遣わなくてはいけなかったのでまともに食事をすることができず、ヴァイオレットは目の前にご馳走があるにも関わらず我慢を強いられる羽目となった
『はぁ……疲れた。全っ然楽しくなかった』
『自分の立場を優位なものとする為我々に媚びてくる人間共をいちいち相手にするというのは面倒なものだな。途中で蹴散らしたくなったわ』
『これも良好な関係を築く為って分かってるけどやっぱり私こういうの向いてないなぁ。今度からはこういうの得意な人を派遣して代わりにお願いしようかな』
貴族との会話は常に自分を良く見せようとするもので、いかに優れているかを披露する自慢大会のようで非常に退屈だった
夜風に当たりながら一息つきつつ、カラミティに戻ったらガリアに適任者を探してもらおうと考えているとミーシャが声をかけてきた
『ヴァイオレット』
『あ、ミーシャちゃん』
『随分と疲れてる顔してるわね』
『慣れない事してたからねぇ。お腹もペコペコだよう』
『そう言うと思った。はいこれ』
そう言うとミーシャは紙袋を手渡してくる
その紙袋を受けると中からは香ばしい匂いが漂ってきた
それは王都に来た際に気になっていたお店の料理だった
『これ私が食べたかったやつ。もしかして買ってきてくれたの?』
『来る時に食べたいって話してたからね。話してばかりで全然食べれてなさそうだったから料理人に温めてもらって持ってきたわよ』
『ありがとう~……ん~!想像していた通り美味しい~。ミーシャちゃんも食べよ』
『そうね、頂こうかしら』
テーブルにミーシャが買ってきた料理を並べて二人で話しながらつまむ
街の方からは祭りで賑やな声がここまで聞こえてきていた
『明日でお祭りももう終わり。私達も国に帰らなきゃだからまた暫くお別れになるわね』
『そうだね、でもお互い同盟国になったんだしこれからは前よりも会えるようになるよ』
『そうね、エリザとは話さなくていいの?』
『そうしたいところだけど……あの様子じゃなぁ』
エリザの周りには常に貴族連中が付き纏っていて、こちらが話しかける隙がまるでなかった
『でもまぁこのお祭りの間にたくさん話せたしいいかな。これからまた忙しくなっていつ会えるか分からないし寂しくなっちゃうだろうから』
『そう?まぁあなたがそれでいいならいいんだけど』
そうして祭りも終わり、エリザにちゃんとした挨拶もできないままヴァイオレット達が王都を出立する日がやってきた