正装
エリザに会う前に着替えを行う事になったが、ドレスコードに疎いヴァイオレットはシャルルに身を任せた
そして追加でやってきたお手伝い数人と共にシャルルは、数あるドレスの中からヴァイオレットに似合いそうなドレスを見繕い、それに合う装飾品と化粧を施していった
そうして完成した姿をヴァイオレットに見せた
『終わりました。いかがでしょうか』
『はぇー、凄いね。まるで別人自分じゃないみたい』
『とても良くお似合いですよヴァイオレット様』
『そう?ありがとう』
ヴァイオレットの髪に合わせた真紅のドレスに竜を象った銀色の耳飾り、化粧は素材の良さを損なわいよう敢えて薄めに
普段は化粧や装飾品等を一切しないヴァイオレット、だが元々の美貌に加えて城で仕えてる腕利きの給仕達の手によって貴族令嬢顔負けの姿へと変貌を遂げた
女性陣達がわいわい盛り上がっていると、そこへ外で待機していたルージュ達が中に入ってくる
『どう?できた?わー!ヴァイオレットがお姫様みたいになった!』
『うむ、馬子にも衣装というやつだな』
『それ褒めてないと思うんだけど……そうだ!ミーシャちゃんの方も終わってるかもだからちょっと見てこようっと……っととと!セーフ……いつもみたいな感じで歩くと躓いちゃいそうだなぁ』
大股で歩くとスカートを引っ掛けて転んでしまいそうだったので、歩幅を小さくしてゆっくり歩きつつ部屋へと向かった
ライオネルの従者として来ているミーシャは本来目立つような真似は推奨されないが、今回は他にも従者がおりライオネルの娘、つまり王女という立場でもある為ライオネルと共にお偉い方に挨拶をする事が必然的に多くなるのでヴァイオレットと同様な扱いを受けることとなった
上手く歩けない煩わしさを感じながらもミーシャがいる部屋へ行くと、ちょうど着替えを終えたミーシャが部屋から出てきた
『どうかしら?』
『ミーシャちゃん綺麗!私なんかよりずっとお姫様みたい!』
『ありがとう。まぁ一応王女ではあるんだけどね。けどやっぱりこういう格好は少し恥ずかしいわ』
透き通った淡い水色のドレスにピンクの口紅、ヴァイオレットとはまた違った魅力を放っていて獣王国の王女として相応しい格好へ昇華していた
『というかさり気にルージュもニフリートもタキシードなんて着ちゃって』
『折角だからってボクらの分も用意してくれたんだって』
『まさか人間の同じ服を着ることになるとはな。窮屈この上ない』
『ハハッ二人も似合ってるよ』
こうして全員の着替えが終わるとシャルルが扉の前まで来てヴァイオレット達に告げた
『それではエリザ様の元にご案内します。どうぞこちらへ』