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竜皇女と呼ばれた娘  作者: Aoi
竜魔決戦編
326/342

永い眠り

ミュゼルの前に突如として現れたのは銀髪の女性だった

整った顔立ち、透き通った肌に黄金比とも言えるような体つきをしていて、男女問わず視線を集める彼女にこそ絶世の美女という言葉が似合っていると言っても過言ではなかった


当のミュゼルもその姿を目にした時は一瞬見惚れかけてしまったが、すぐさま警戒心を最大まで引き上げた

ここの近辺に村や町もなければ人が通る道もなく辺りには魔物がうじゃうじゃといる

加えてミュゼルはここに誰も寄りつかないようにする為、特殊な結界を張りここへ辿り着けないようにしてある

故にただの人間がこんな場所に来れるはずがなかった

服には汚れ一つついておらず声をかけられるまで全く気配が感じ取ることができなかった

ミュゼルは老婆とは思えない身のこなしで女からすぐさま距離を取る

見た目のせいもあってか目の前にいる存在がより一層異質な存在に見えた

相手の一挙手一投足に注意を払いながら問いかけた



『誰じゃ……貴様は』

『私はバシリッサ。ヴァイオレットの育ての親よ』

『あ奴の親……なるほど。つまりお主もあのデタラメな災厄竜と同じ竜ということか?』

『そうね、アレと同じというのは少し癪ではあるけど』

『それよりここは妾以外誰も来れないようにしたはずじゃがどうやって見つけ出した?』

『そう難しいことじゃないわ。あなたが作った複製体……だったかしら?その子達にここから蜘蛛の糸みたいな細く微量な魔力を送って指示をしていたのでしょう。ただそれを辿ってたらここに着いただけの話よ』

『まさかそれを見抜く者がいたとはのぉ。不覚じゃわ』



少しでも会話を長引かせて相手の力量を測ろうするミュゼル

しかし見定めている内に相手があのイグニスと同等の、自分の物差しでは到底測れない領域にいる存在だと知り愕然とする

一見隙だらけのように見えてもまるで付け入る隙がない

全速力で逃げたとしても追いつかれるのは目に見えていた



『それでここに来た目的は?愛娘を虐められたからその報復にでも来たか?』

『んーそうねぇ、目的は違うけど結果的にはそうなってしまうかもしれないわね』

『どういうことじゃ?』

『報復に来たのでなく排除しに来たの』



ミュゼルにそう言い放つバシリッサからは凄まじい圧を感じた

その圧にミュゼルが気圧されていると、バシリッサは人形のように全く表情を変えず淡々と続きを話した



『勘違いしないで欲しいのだけれど私は今回の事であなたを怒ってるわけじゃないの。あなたにも何か目的があってのことでしょうしその事に一々目くじらを立てるつもりはないわ』

『じゃあ何故じゃ?』

『また同じ事をしてヴァイオレットが巻き込まれたりするのは嫌なのよ。あの子の選ぶ道の障害となる可能性があるのならその前に排除しようと思って』



つまりこれ以上やるならそれ相応の覚悟を持ってやれと。ミュゼルは目の前の人の姿をした竜からそう言われた



『随分と過保護じゃのぉ……つまり妾が生き残る手段はお主を殺すしかないというわけか』

『そうね、でもあなたにそれができる?力の差が分からないわけではないのでしょう?』

『そうじゃのぉ、天地がひっくり返ったとしても戦いにすらならないじゃろうな。じゃがここで妾が諦めると言ったら見逃してくれるのか?』

『ないわね。だってあなたの目からは全く諦めを感じないもの』



絶対的強者を前にしてもミュゼルは自分の野望を捨てようとはしなかった

話した通り倒せる算段など一つたりとて思いつかない。目の前にいるのはそういう存在だ

それでも本能が諦めることを拒否した



『さて、お話はこれくらいにして始めましょうか。安心して、痛くないように殺してあげる』

『それは有難いのぉ。じゃがその前に気が済むまで抵抗させてもらうがの』



それがミュゼルの最後の言葉となり、激しいてい抵抗を見せたがそれも虚しく、バシリッサが言ったようにミュゼルは寝ているかのような心地よい表情で永遠の眠りについた



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