竜の群れ
隕石が消滅したことにより王都は助かった
突然の出来事の連続で呆然とすることしかできなかった国民達も、自分達は助かったのだという実感が次第に湧いてきてやがて割れんばかりの歓声を上げだした
『やった……やったぞ!俺達助かったんだ!』
『よかった……!本当に……!』
周りにいる者達で抱き合い喜びを分かち合う
その光景を見て隕石を食い止めようとしていたエリザはへたり込んだ
だが安堵している場合ではないとすぐさま立ち上がり、意識のある兵士達に指示を送った
『どうやら窮地は脱したようですね。しかし油断は出来ません。動ける者は住民の安全の確保、それと魔力を切らして倒れている者達の介抱を』
『ハッ!』
『しかし先程の凄まじい攻撃は一体……』
謎の熱線によって命拾いはしたが、先程の攻撃が王都に向かないとは限らない
動ける者を総動員して警戒にあたった
その間ヴァイオレットはエリザの複製体がある場所に向かい安全確認を行った
まだ何か仕掛けがあるかもしれないと警戒したが、流石にあの状況ではこれ以上の仕掛けを施すことはできなかったようで他には何も仕掛けられていなかった
『今度こそ終わりかな。あんなのまで隠してたなんて驚いたよ』
ルージュ達と力を合わせても隕石を壊すことができなかった事に、ヴァイオレットはまだまだ自分には力が足りないと思い知らされた
それと同時にあの隕石を消し飛ばしたあの熱線を思い返す
あんな出鱈目なことができる存在などヴァイオレットには一人しか思いつかなった
熱線が飛んできた方に暫く目を凝らす
すると山の向こう側からポツポツと黒い点の様なものが確認できた
それは徐々に王都の方に近づいてきて、やがて王都の民達も目視できる距離までやってきた
『お、おいなんだあれ……』
『どうした、今度はなんだ?』
一難去ってまた一難
だが警戒する兵士達とは打って変わってヴァイオレットはその正体がなんなのかすぐさま理解し、崩れかけている城の頂上まで登ってこちらに向かってくる者を待ち構えた
対して王都の国民達は正体が分かると震え上がり再び絶望を味わうこととなった
『いやまさか……そんなはずはない……何かの間違えだっ!』
『災厄竜……本当に存在していたのですね……』
絶対的な強さを誇り人からは災厄を運ぶ竜と呼ばれているヴァイオレットの父、イグニスが王都を見下ろしながら姿を現した
そしてその後ろには竜の国の面々を従えていた
一度に数百もの竜と対峙した事によって地上にいる者達は錯乱状態になってしまった