極大魔法の模倣
ミーシャとシェリアに争う人達を食い止めてもらっている間に、ヴァイオレットが操られた人達を解放する為に考えた方法を試すことにした
壁の先にいるミュゼルが壁を破壊してくるまでの時間は数十秒もないだろう
残された僅かな時間で初の試みに挑み、成功させなくてはいけないというのはかなりのプレッシャーがかかるだろうがやるしかない
『団長がやってた極大魔法……あれを模倣することができれば』
ヴァイオレットがやろうとしていること。それは魔法効果の上書き
ミュゼルが使った魔法と同じ魔法をかけることによって相手から指揮権を奪うという試みだ
これは相手の魔法を模倣できるヴァイオレットにしかできない芸当である
ただ問題なのは極大魔法という大勢の複製体ミュゼルを犠牲にしなくてはいけないほど魔力を大量消費する魔法なこと
その点に関してヴァイオレットの魔力量であれば問題はなかったが、それとは別にもう一つ問題があった
それは極大魔法という魔法を模倣するというイメージができないということ
魔法の解析は済み。あとは魔法を発動するだけなのだが、自分がこの魔法を使っている姿が想像することができなかった
『もっと具体的にイメージしなくちゃ』
魔法はいかにイメージを具現化できるかが鍵、未知の極大魔法となるとより強いイメージが必要となる
頭では理解していても実際に行動するとなるとズレが生じて魔法が不発に終わるかもしれないし、最悪暴発して状況を悪化させてしまうかもしれない
ヴァイオレットの固有魔法である解析は魔法の仕組みだけでなくそういった面も手助けしてくれるのだが、今の状態では失敗の方に結果が向かってしまう
確実に極大魔法を発動させるにはより鮮明なイメージが必要、その為にはもっと極大魔法を解析する必要がある
『どうやってもう一度解析をするか……そうだ!』
極大魔法を再び解析する為にヴァイオレットはルージュの元へ駆け寄った
魔法にかかって眠っているルージュに触れ解析することによって極大魔法の発動を確実なものとする
『あともう少し……』
『そうはさせないぞ』
あと僅かで解析が完璧なものになるというところで、ミュゼルが壁を破壊してこちらに向かってきた
せめてあと十秒時間があれば……そう思ったのも束の間、ミュゼルが攻撃を仕掛けてきた
『これで詰みだ』
『そうは……させねえよ!うらあああ!!』
ミュゼルの攻撃が届きかけたその時、大怪我で倒れていたライオネルが盾となりヴァイオレットを守った
全快時には程遠く全てを弾き返すことはできず何発も被弾してしまう。それでも血を吹き出しながら懸命にヴァイオレット達から先への攻撃を防いだ
その甲斐もあり十秒の時間を稼ぐことができた
『チッ……邪魔な獣め』
『ライオネルありがとう!いくよ!』