複製体
ヴァイオレット達の前に立ちはだかった同じ姿をした何人ものミュゼル
流石にこの状況を想定していなかったヴァイオレットの頭は混乱していた
『えっと、違うとは思うけど全員姉妹……とかじゃないよね』
『はっはっは、そうなると妾の母が相当頑張ったことになるのぉ。こ奴らは妾が長年かけて研究して完成させた妾の複製体じゃ』
『複……製体?』
聞き慣れない言葉を聞き首を傾げるヴァイオレットにミュゼルは、隣で待機している自分の衣服を捲りその証である魔法陣を見せた
『要するにこれは魔法で生み出した妾そっくりな人形のようなものじゃ。人形に魂を吹き込み実際の人間と同じ行動を取ることができるのじゃ』
『じゃあまさかこの前私が戦った団長もその複製体だったってこと?』
『その通り。顔や仕草、喋り方まで似せるのに苦労したものよ』
魔法でそんなものを作り出すことが可能とは
今の口ぶりだと恐らく戦闘面も全員同じ実力なのだろう
これはかなり面倒な事だと感じると同時に、ヴァイオレットはある言葉が引っかかった
『魂を吹き込むって言ってたけど……それも魔法でできたの?』
ヴァイオレットが尋ねるとミュゼルは嬉しそうに話し出した
『そう、そこなんじゃよ。この複製体を作るのに一番苦労したのは。器を作るのはそう難しいことではなかったがその器に命を与えるのは魔法では限界があったんじゃ。だから妾は別の方法を考えた。そこで思いついたんじゃ。魔法で作らずともこの世界にはたくさんの命で溢れていることに』
今までこの事を話す相手がいなかったのか、ミュゼルは自分の複製体完成に至るこれまでの過程を楽しそうに話し続けた
『始めは小動物から実験して徐々に大きくしていったんじゃ。器に魂だけでなく記憶を定着させるのには幾つもの魔法陣を書き込む必要があってのー。特に人間は複雑だったから何度も失敗して苦労したものじゃ』
『じゃあここにいる団長全員……』
『ん?あぁそうじゃよ。生きた人間の魂を使って作ったんじゃ。凄いじゃろ!』
嬉々として語るミュゼル
それを聞いたヴァイオレットは冷ややかな目でミュゼルを見つめながら聞いた
『どうしてそんなことをしたの?何かそうしなくちゃいけない理由があったの?』
『どうして……?んー強いて言うならば不老不死に興味があったからじゃが、特別な理由なんて特にないな。単なる好奇心じゃ』
『自分の欲を満たす為に人の命を奪ったんだ』
『何をそんなに怒っとるんじゃ?欲を満たす為に命を奪うなんて食欲も同じじゃろう。妾にとってはそれと大差ないことじゃ』
『そっか、やっぱりあなたはここで確実に殺した方がいいみたいだね』