魔法喰らい
敵軍の中に侵入し目の前の敵を次々と蹴散らしていく
だがやはり数が多く、いくら倒しても目の前の敵が途絶えることはなかった
『分かってたことだけどやっぱり数が多いねぇ。一気に片付けちゃうかな?』
『ヴァイオレット様はまだ力を温存しておいて下さい。この程度の相手であれば我等だけで事足ります』
『皆の事はそこまで心配してないけど……ん?』
竜人の力を使って周囲の敵を一掃してしまおうかと考えていると、上空で待機していたワイバーンの軍勢がヴァイオレットとライオネル達の軍にそれぞれ攻撃を仕掛けてきた
『一斉掃射!』
およそ千体のワイバーンによる火球のブレスが一斉に放たれ、軍の内側で休息を取っていた仲間達に降りかかる
そこへヴァイオレットが立ちはだかる
敵も味方もこの攻撃を全て処理することは出来ない
そう思っていたのも束の間、ヴァイオレットは誰も予測していない動きをし始めた
『すぅぅぅぅぅぅ!!!』
なんとヴァイオレットは無数の火球ブレスを勢いよく吸い始め、それを全て自分の胃袋へと収めてしまった
そのあまりに意表を突いた防ぎ方に一瞬敵味方共に言葉を失ってしまった
『……はっ?なんだ今のは?今何が起こった?』
『魔法を……食った?そんなことが有り得るのか?』
相手の魔法を無効化したり弾いたりしたりはよくある
だがヴァイオレットが見せたのは正に魔法を食らうというのが最も正しい表現だった
『んー……初めて食べたけどあんまり美味しくないね。返すよ』
そう言うとヴァイオレットは先程食らった火球を、自分が食らった何倍もの大きな火球に変化させてワイバーン達に向けて放った
千体分の火球を一つに凝縮した火球はワイバーン達を飲み込んだ
これによって向かってきた千体のうち半数近くが避けることができず、自ら放った火球によって焼き尽くされてしまった
『ふぅ』
『ヴァイオレット様、今のは一体……』
『この体になってからなんかできると思ったんだよね』
『なんかって……』
『ハッ!うちの大将はやることが派手だねぇ』
本人は感覚でいけると判断したが、これはヴァイオレットの固有魔法である模倣と|解析を使用することによって成し得ることができた
本来は相手の魔法を解析してから模倣する
その手間を直接体内に取り込むことによって解析と模倣を同時に、しかも瞬時に済ませてしまった
魔法を食らうことができたのはニフリートの固有魔法暴食を模倣し、ヴァイオレットなりの形に昇華した結果であった
『ヴァイオレット・カラミティア……なんて出鱈目なやつだ!』