地図の入手
空を飛んで一足先に港へとやって来たヴァイオレットは地図探しを始めた
港は予想していた通りヴァイオレット達が来るのに備えて警戒がなされていた
そのお陰か港町はバタバタしていて一人侵入するのは容易であった
『さて、何処に行けば地図が手に入れられるかな。本屋とかに行けばあるかな?』
町の中を歩きながら地図の在り処を考える
町にいる人達に話を聞けば簡単に見つかるかもしれないが、顔が知られているかもしれないので迂闊に自分から話しかけることはできなかった
考え事をしながら町を歩いていると、すれ違った女性に声をかけられた
『ちょいとアンタ!』
『え、私ですか……?えと、なんでしょうか?』
顔を隠してできるだけ目立たないようにしていたつもりだったがバレてしまったか
いつでもこの場から逃げられるように身構える
しかしそんなヴァイオレットの心配はすぐに杞憂となった
『そっちは今兵隊さん達の駐屯地になってるから一般人が行っても止められちゃうよ』
『ホッ……そうなんですかありがとうございます。私は旅人でさっきここに着いたものですから』
『それはタイミングが悪かったわねぇ。悪いことは言わないから早めにここを出た方がいいわよ。近々ここで戦争が起きるかもしれないからね』
『何かあったんですか?』
『王女様の殺害未遂で指名手配された犯人が仕掛けてくるかもしれないんだって。ここにいた町の人達の殆どは友人や親戚の家に避難してるんだ。だからアンタもさっさと町を出ることだね』
『ご親切にどうもありがとうございます。用事が済んだらすぐ出ていこうと思います。ちなみに地図を置いてあるお店とか知ってたりしますか?できるだけ詳細に描かれているものが欲しいんですが』
『地図?ざっくりとしたものなら本屋にでも売ってるだろうけど詳しく描かれてる地図なんて重要な情報も載っていて普通の人じゃまず手に入らないと思うよ』
確かに詳細な地図がそこら中に出回っていたら他国にも流出してそれを悪用されるかもしれない
となれば町を探し回っても意味はないということか
忠告をしてくれた女性が立ち去るとヴァイオレットは先程向かおうとしていた方に目を向けた
『駐屯地。そこになら地図もあるかも』
作戦を練るのに地図は必須のはず
敵がわんさかいる所に忍び込むのはリスキーではあるが、今の力なら隠密に徹すればどうということはないだろう
ヴァイオレットは地図を求め一番可能性の高い駐屯地へと歩を進めた