イグニスの提案
『む、戻ってきたかヴァイオレット』
『お父さん、話があるんだけど』
『なんだ藪から棒に』
イグニスを説得する方法を色々と考えていたヴァイオレットだが、結局いい説得法が思いつかず回りくどいやり方ではなく単刀直入で話をすることにした
『お父さん、ドラグニルさんの後を継いで……』
『嫌だ』
言い終える前にイグニスは苦虫を嚙み潰したような顔で断りヴァイオレットの話を遮った
まぁそうなるだろうなとは思いつつも負けじと再度説得を試みてみる
『お願いだよー。お父さんの故郷でもあるんだしさぁ。ドラグニルさんもお父さんを認めてるから私にお願いしてきたんだよ』
『やはりあのクソ親父に何か吹き込まれたようだな。吾輩は群れるのも肩書きに縛り付けられるようなのも好かん』
『そこをなんとか!』
『絶対に嫌だ!』
必死に頼み込むもイグニスは頑なに断り続けた
しかしそんな押し問答を繰り返しているうちにイグニスの様子が変わった
『ん?いや待てよ……?』
『?』
急に何かを考え出したイグニスの顔は先程までの嫌悪感たっぷりの顔と違い、悪巧みを思いついたような不敵な笑みを浮かべていた
そして断り続けていたにも関わらずヴァイオレットの嘆願に対して首を縦に振った
『いいだろう。ヴァイオレットがそこまで言うのなら吾輩が竜王になってやろうではないか』
『本当!?でもどうしていきなり?さっきまであんなに嫌がってたのに』
『吾輩だって色々考えているのだ。考えが変わる事だってある』
そう話すイグニスは明らかによからぬ事を考えていそうな顔をしている
仮にもイグニスに赤子の頃から育ててもらっていたヴァイオレットには何を考えているのかなんとなく想像がついた
『もしかして王様になって他の竜を自分の手足のように使って楽しようとか思ってないよね?』
『そ、そんなわけないだろう!』
どうやら図星の様だ
ヴァイオレットにまんまと言い当てられてしまったイグニスは誤魔化そうとしているが嘘をつくのが下手すぎる
『言っておくけど王様になるんだったら他の竜達に無理な要求ばかりしてたらダメなんだからね』
『ちっ……だがそれはあくまで目的の一つにすぎん。吾輩が考えていたのはそれだけではないのだ』
『というと?』
どうせまた自分が楽をする方法だろう
そう思いあまり期待せずに話を聞こうとしていると、イグニスの口から意外な提案が出てきた
『吾輩が王となった暁にはヴァイオレット、お前の国とこの竜の国とで同盟を組もうではないか』
『……同盟?』
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