王になってもらう為に
ドラグニルがヴァイオレットにした頼み事
それはイグニスをこの竜の国の王の座に就かせてほしいというものだった
だが王などという面倒な役をイグニスが受けるとはとても思えない
たとえヴァイオレットが頼み込んだとしても難しいだろう
そもそもそれを他の竜達が許すとは思えなかった
『お父さんを竜王にするのはかなり難しいと思うんですけど……他の竜達からも反感を買いそうですし。お父さんよりもヘイヴルさんとかの方がいいんじゃないでしょうか』
『ヘイヴルも候補の一人であったがあ奴は自分が王の器ではないと言われ辞退されてしまった。竜王に必要な資質は唯一つ、他の竜よりも圧倒的な力を有していること。その点においてはイグニスは文句のつけようがないと誰もが首を縦に振るだろう』
竜社会は実力で優劣が決まる完全なピラミッド社会、ある程度反感を買うことはあっても実力で黙らせることができるという事なのだろう
それを踏まえてもイグニスの素行はあまりにも悪かった為すぐに王の座を譲ることができなかったと
今でも暴れん坊気質はあまり変わらないように見えるが……
『昔のイグニスは息をするように暴れ回っていたがお主と出会ったことで大分マシになった。今のあ奴にならば任せられると思ったのだ。勿論ヘイヴルを側につかせて監視はさせないといけないがな』
『うーん、それでも受けてくれるかどうか……』
『必ずとは言わない。せめて話してみてはくれないか。お主の言葉であればあ奴も多少は耳を傾けてくれるだろう』
こんな小娘相手に真摯に頼み込んでくるドラグニル
無論ヴァイオレットもこの力を手に入れることができたのはドラグニルのお陰であることが重々承知しているので、無理だったとしてもやらずして断るというわけにはいかなかった
『分かりました。難しいとは思いますがやれるだけやってみます』
『すまんな、頼んだぞ』
ドラグニルの頼み事を受けたヴァイオレットはすぐさまイグニスの元へと向かうことにした
その道中、どう説得すればイグニスを竜王の座に就かせることができるかと頭を捻らせた
『あれ、こういう時よく誰かがアドバイスをくれていたような……誰だったっけ?』
名前は分からない。だがすぐそばにいた相手でその人物を頭の中で思い浮かべようとするが、靄の様なものがかかってしまって思い出すことができない
誰だったかと気になりはしたが、今はそれよりも目の前の問題を片付けなくてはいけない
考えが纏まらないうちにヴァイオレットは自分の帰りを待っていたイグニスの元まで行き話を切り出した
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