それから
竜人となったヴァイオレットは自分の体の具合を確かめる為に色々と試してみた
『わぁ……これが飛ぶって感覚かぁ。おっとと、まだ慣れないけど楽しいなー』
今まで自分の体になかった部分を動かすわけだから最初は上手く動かせず飛ぶことすらおぼつかなかったが、普段周りにはルージュ達がいたのでイメージは掴みやすくみるみると上達していった
変わったのは当然空を飛べる事だけではない
龍脈石から自然エネルギーを取り込んだことによってヴァイオレットは身体能力に加え魔力が著しく成長していた
それこそ竜の国にいる殆どの竜相手に勝つことができる自信が今のヴァイオレットにはあった
『凄い、かなり動いたはずなのに全然疲れてない。それどころか力がどんどん溢れてくる感じがするよ』
『最早今の我よりも力は上、これだけの力があれば竜の国の者達の協力を仰がなくても問題ないだろう』
『そうだね、当初の目的は達成できなかったけどこれなら……』
まだ完璧に力を使いこなせてはいないが、この力があればどうにかできるかもしれない
一通り力を試したので終わろうとしていたところにその様子を眺めていたイグニスがやってくる
『なんだ、もう終わりか?それなら最後にもう一度吾輩とも手合わせをしようではないか』
『いや、お父さんとはいいや』
『何故だ!お、おいどこに行く』
『ちょっとお礼を言いに行くだけだよ。ついてこなくていいからね』
以前よりも強くなったからこそ明確に理解できる。今の状態でもイグニスに勝つことはおろか勝負にすらならないことを
底知れない力に改めて父の偉大さを再認識できた。父と手合わせするのはその高みに少しでも近づけるよう研鑽を積み、まともに相手ができるようになってからだ
鍛錬を済ませた後はドラグニルの元へと今回の件のお礼を言いに行った
『本当にありがとうございました。これでなんとかなると思います』
『なに、血は繋がってないとはいえお主は孫のようなもの。力になりたいと思うのは当然のことだ』
『この力で仲間を守ってみせます。落ち着いたら報告がてらまた来てもいいですか?』
『あぁ、楽しみにしているぞ。ところでそんな孫に一つ頼み事をしたいのだが聞いてくれるか?お主にしかできないことなのだが』
『勿論です。私にできることであれば』
これだけお世話になったのだからできる限りの恩は返したい
どんな頼み事かとドラグニルの次の言葉を待っていると暫くして重い口を開いた
『我が息子イグニスを説得して竜王の座に就かせて欲しいのだ』
『ごめんなさい無理です』
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