竜人
ヴァイオレットが龍脈石を取り込んでから数時間、その間大人しく待っていたイグニスも痺れを切らして暴れる寸前まできていた
『ええい!何時になったらヴァイオレットは戻ってくるんだ!いい加減我慢できないぞ!』
『相変わらず短気な奴だな』
『ヴァイオレットはさっきの戦闘で全部の魔力を使っちゃったから暫くは起きて来ないと思うけど……』
『主の邪魔をしたらもう話せないぞ』
『ぐぅ……!』
中の様子がどうなっているか分からず苛立ちを募らせるイグニス
ヴァイオレットの名前を出すことでなんとか凌いできたが効き目も薄くなってきている
ヴァイオレットがいない状態で次また暴れられたらこの場は滅茶苦茶になってしまうだろう
いつ限界がくるだろうかとヒヤヒヤしていると、閉まっていた古城の扉がゆっくりと動いた
『ヴァイオレットか!』
『ということは無事に竜化が終わったってことだよね』
『果たしてどのような姿になっているか……』
全員が固唾を飲んで扉の方へと目を向ける
一体どんな竜の姿をしているのか。誰もがそう考えていたが扉の先から現れたのは普通に人間の姿をしているヴァイオレットだった
『あれ?』
『あっ、皆待っててくれたんだ』
『う、うん。それよりもヴァイオレットその姿って……』
『竜化しなかったのか?』
『いや、前とは比べ物にならない程力が増しているのが分かるぞ』
『それがね、力は取り込めたんだけどちょっと予定とは違う姿になっちゃってさぁ……』
そう言うとヴァイオレットが体に力を入れ始めた
何をしているのかと周りが視線を向けていると、なんと体から尻尾と翼、そして頭に角が生えてきた
その姿を見て全員驚いていたが、中でも一番驚いていたのはやはりイグニスだった
『ヴァイオレット。な、なんだその姿は……』
『いやぁ私も何が何だかサッパリ。目が覚めたらこんな姿になってたんだよね』
『長い事生きてきたがこのような姿は初めてみるな……』
最年長であるドラグニルでもヴァイオレットの今の姿を見たことがないという
人間ではなくなっているがかといって竜でもない。これはつまり新たな種族の誕生という事になる
そして見たことも無い姿を目の当たりにしたニフリートがこう呟いた
『人と竜が入り混じった姿……名づけるならば竜人、といったところか』
『竜人……いい響きだね。これから私は竜人のヴァイオレットとして生きていくよ』
人間から竜人へ
無事に進化を遂げることができたヴァイオレットはイグニスの元へと歩み寄る
『お父さん、どう?これなら文句ないでしょ?』
『う、うむ。これでいい……のか?』
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