親の居ぬ間に
龍脈石を口にしたヴァイオレットは一気に石を飲み込んだ
石だから味はしなかったが喉を伝っていく感覚はあまりいい気分ではなかった
それを見ていたルージュが問いかけてくる
『ヴァイオレット、今何食べたの?』
『色々説明は省くけど……強くなる為に私も竜になることにしたの。今食べたのはそれ』
『えぇ!?だからそれで言い合いしてたんだ……ヴァイオレットはそれでいいの?』
『うん。もう決めたから』
『そっか……決める前に相談してほしかったけどヴァイオレットが決めたんだったらその気持ちを尊重するよ。それに竜になってもヴァイオレットはヴァイオレットだもんね』
『ごめんね、ありがとう』
事後報告になってしまったことをルージュに謝り自分の気持ちを尊重してくれたことに感謝をした
ドラグニルの話だと石を飲み込んだ後は苦しむことになる
ここだとイグニスが目を覚ました後また面倒なことになるのは目に見えているので、どこか落ち着けるような場所に移動した方がいいだろう
そう考えているとドラグニルが声をかけてきた
『先程の地下に部屋がある。あ奴のことはこちらに任せてそこを使うといい』
『ありがとうございます。あ、あとお父さんが目を覚ましたら伝えて欲しいことがあるんですけど……』
ドラグニルの計らいであとの事は任せることにしたヴァイオレットはついでに伝言をお願いしてその場をあとにした
その数十秒後、イグニスは目を覚ました
『ヴァイオレットめ、小癪なマネをしおって……む、ヴァイオレットはどこだ!』
『主ならここにはいないぞ』
目覚めたイグニスに最初に声をかけたのはニフリート
ニフリートからしたら自分に深手を負わせ本来の力を出せないようにされた忘れもしない憎き相手
当然相手もこちらの事を覚えているはず
しかしイグニスはこれっぽっちも覚えていなかった
『誰だ貴様は。吾輩に気安く話しかけるな』
『まさか……我を忘れたというのか?』
『ヴァイオレットと共にいたことは知っているがそれ以外に貴様を見た記憶はない』
『ふざけるな!貴様が我の縄張りだった場所に来て無理矢理棲家を奪ったのだろう!』
『……?あぁ貴様あの時の竜か。弱い奴のことなど一々覚えていられるか』
『貴様……!』
腸が煮えくり返る思いでイグニスを睨むニフリート
何百年と恨みを抱いていた相手が顔すら覚えていなかったのだから無理もないだろう
今にも暴れ出しそうなニフリート、しかしそこへドラグニルが割って入る
『一杯食わされたなイグニスよ』
『クソ親父……ヴァイオレットはどこだ』
『そのヴァイオレットから言伝を預かったから伝えにきた』
『なんだ、言ってみろ』
『「これ以上邪魔したらもう一生口を利かないからね」だそうだ』
『い、一生だと!?ぐ、ぐぬぅ……』
嫌われるだけならまだなんとかなるが流石にそれは辛いと感じたのか、イグニスは大人しくなった
イグニスのその様子を見てニフリートはほくそ笑んだ
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