勝てないのなら
魔力全開放をしてイグニスに勝負を挑もうとするヴァイオレット
ニフリートと戦った時に使った頃よりも魔力は増えているので効果は更に上がっている
それでもイグニスは顔色一つ変えなかった
『その技は一度見たことがあるな。だがそんな子供騙し吾輩には通用しないぞ』
『やってみなきゃ分からないもん!』
魔力全開放を使った以上残された時間は少ない
ヴァイオレットは間髪入れずに猛攻を仕掛けた
『竜の息吹!』
『ぬるい!』
魔力全開放状態のヴァイオレットの息吹をイグニスはものともしない
それでもヴァイオレットは諦めることなくしつこく何度も息吹をイグニスに浴びせ続けた
『ええいチクチクとくすぐったい。無駄だと言っているだろう。いい加減に……諦めろ!』
いくらダメージを負わないとはいえ、こう立て続けに食らっていたらイグニスでも流石に煩わしさを感じる
かといってヴァイオレットを傷つけることはできない
なのでイグニスは息吹ではなく目一杯吸い肺に溜めた空気をヴァイオレットに向けて放った
『うわっ!』
ただの息を吹きかけただけ
それでも全力のヴァイオレットが放つ息吹よりも威力が勝っており、ヴァイオレットは吹き飛ばされた
『ハァハァ……』
『それは時間制限付きの諸刃の剣なのだろう?どうやら効力も落ちてきているようだしこれで気が済んだだろ』
魔力全開放の効力がなくなるまで残り僅か
これを使った後は意識を失ってしまう
だがここまでは計算内
ヴァイオレットは意識を失う前にどうにかイグニスの様子が変わる事を願う
そしてその願いは届いた
これまで悠然と立っていたイグニスが急にフラつきだした
『な、なんだ……?』
イグニス自身も困惑している様子だったが、為す術もなくその場で力なく倒れてしまった
それを見ていた者達はヴァイオレットの攻撃が効いている様子は全くなかったのにと何が起こったんだと混乱した
『う、動かない……?ヴァイオレットが勝ったの!?』
『いや……少し違うな。あれは……』
ルージュ達が倒れているイグニスに近寄って様子を確認してみると、イグニスから大きないびきが聞こえてきた
『ね、寝てる?』
『そのようだな。どうやら主は無闇矢鱈に息吹を放っていたのではなく息吹に相手を眠らせる魔法を乗せて放っていたようだな』
羊達の囁き
相手に一定時間聞かせることで眠りを誘う魔法
卑怯な手ではあるがイグニスを止めるにはこの方法しかなかった
これさえも効くかどうかは賭けだったが、油断してくれていたお陰か上手く眠らせることに成功した
とはいえイグニス相手では効き目も短いはず
その間に事を済ませてしまおうという算段だ
『お父さんごめんね。でも私は後悔なんてしないから』
そう言いながらイグニスを一瞥した後、ヴァイオレットは持っていた龍脈石を口の中へと放り込んだ
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