譲れない両者
ヴァイオレットが竜化するかどうかを巡って言い合いをする両者
いくら言っても引き下がろうとしないイグニスに対してヴァイオレットは相当腹を立てている様子
それをルージュとニフリートはずっと眺めていた
『あれがヴァイオレットのお父さんなんだ。さっきの凄かったね』
『あぁ。しかしイグニスめ。我と戦った時よりも更に力をつけおって……相変わらず忌まわしい奴よ』
『ボクにもあんな力があればな……』
『貴様はその若さでよくやっている。まだまだこれからだろう』
イグニスの力に羨望の眼差しを向けるルージュ
そこへヴァイオレットの声が響き渡った
『もう!どうして分かってくれないの!』
『吾輩はお前の為を思って言っておるのだ』
『私の気持ちも考えないで私を思ってとか分かんないよ……お父さんなんて大嫌い!』
『うぐっ……!』
ヴァイオレットに嫌いと告げられたイグニスは大ダメージをくらう
何十頭といた竜を相手にするよりもたった一人の愛娘に嫌いと言われる方がイグニスにとってはこれ以上ない苦痛だった
その様子を見ていた倒された竜達は唖然としていた
『あの血も涙もない暴れ竜が苦しんでいるぞ……それも人間相手にだと?』
『何者なんだあの人間は……』
人間と侮っていた者がイグニス相手に全く物怖じしないことにも目を丸くした
そしてヴァイオレットの言葉を受けたイグニスはそれでも自分の意見を曲げようとはしなかった
『ぐっ……た、たとえお前に嫌われようともこれだけは譲れんぞ』
『……だったら無理矢理にでも私は私の道をいかせてもらうよ』
自分の意見を尊重してくれようとしないイグニスに対しヴァイオレットは構える
言葉で伝えても分からないのなら拳で語り合うしかない
『正気か?ヴァイオレット、お前は確かに以前よりも遥かに強くなった。だがそれでもかすり傷すらおろか吾輩を動かすことすらできないことはさっきのを見て分かっているだろう』
『そんな事分かってるよ。でも相手が強いからって逃げてたら何もできなくなっちゃうもん。それがたとえお父さんでもね』
自分ではどれだけ頑張ってもイグニスに敵わないことなんて重々承知している
けれどイグニス相手なら話し合うよりもこちらの方が自分の気持ちが伝わるかもしれないという考えがあってのことだった
自分に戦いを挑んでくるヴァイオレットの目を見てイグニスは娘の挑戦を受けることにした
『いいだろう。お前の気持ちを吾輩にぶつけてみせろ。どこからでもかかってこい』
『いくよ、お父さん!』
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