久々の対面
地に降りてきて久しぶりにしっかりと顔を合わせたイグニスとドラグニル
しかし親子であるはずなのに特に何を話すでもなく、二人の周囲からは険悪な雰囲気が漂っていた
そこへ竜の国にいる他の竜が一斉に集まってくる
『何事だ!』
『あ奴は……もしやイグニスか!?』
『あの暴虐竜が帰ってきたというのか!』
『久々に帰ってきたと思ったら騒動を起こしおって!全員で押さえろ!』
問題児が帰ってきたこと知ると全員がイグニスに向かって攻撃を仕掛け始めた
数十頭もの竜が一頭の竜相手にリンチにも近い行為
いくらイグニスであろうとこれだけの数を相手にするのは厳しいのではないか
ヴァイオレットだけでなくその光景を見たら誰もがそう思うだろう
しかし結果は全くの逆。圧倒的な数の利をものともせず、イグニスはその場から一歩も動かずたった一度の息吹だけで数十頭いた竜を倒してしまった
『ふん、虫ケラ共め。それだけいて傷一つもつけられんとは情けない。それが貴様等の言う誇り高い竜族とやらの姿なのか?』
『く、くそ……!』
『あいつ……以前とは比べ物にならない位強くなっているぞ』
『当たり前だ。守るべき存在ができた吾輩はどんな敵が来ようと負けはせん』
『あの問題児に……守る存在だと……?』
蹴散らした竜達にそれだけ言うとイグニスはヴァイオレットの元へと寄ってきた
『お父さん久しぶりだね。相変わらずみたいで安心したよ』
『うむ、ヴァイオレットも元気そうで何よりだ』
『でもどうしてここに?』
『お前が妙なものに手を出そうとしていたからな。止めにきたんだ』
『え?なんでそのことを知ってるの?』
『あ、いやそれはだな……』
龍脈石のことはドラグニルとさっき話したばかり
そのことを問うとイグニスは急に焦り出した
『……まさかずっと私の行動を監視してたとかじゃないよね?』
『いや!あれはバシリッサの奴がだな!』
カマをかけてみたがやはりこれまでの行動を見られていたようだ
そこでヴァイオレットは自分がピンチの時に突如現れた人物の事を思い出す
『もしかしてあの時助けてくれた執事みたいなおじいちゃんってお父さんだったの?』
『……本当は干渉するつもりなどなかったんだがな』
『そうだったんだ。ありがとうね』
多くの竜が倒れている中で和やかな雰囲気が流れる
だがイグニスが来た目的はヴァイオレットに会いに来ただけではない
『そんなことよりだ。ヴァイオレット、今すぐ自分の場所に帰るんだ』
『嫌だよ。皆が頑張ってるんだから私も何かしなくちゃいけないの』
『それなら吾輩がその国を滅ぼしてやろう。なんなら大陸を火の海にしてやってもいい。吾輩にかかれば赤子の手をひねるよりも容易だ』
『私はそこまでのことは求めてない!それにお父さんは加減を知らないし何をするか分からないから何もしないで』
『だがお前が人の生を捨ててまですることではないだろう』
『私が決めたことなんだからお父さんには関係ないことでしょ!』
覚悟を決めているヴァイオレットとそれを止めようとするイグニス
両者の言い合いが晴天の中暫く木霊した
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