龍脈石
ドラグニルについて行ってやって来たのは古城の地下奥深く
広い空間で薄暗いそこには巨大な赤い石だけがポツンと聳え立っている
赤い石の中で脈を打っていてまるで生き物のようだった
『これは……?なんだか生きているみたい……』
『これは龍脈石だ』
『龍脈石?』
聞いたことのない石の名前が出てきてヴァイオレットは聞き返す
ここに連れて来られたこととこの石が一体何の関係があるのか皆目見当もつかなかった
『この龍脈石は魔力とは異なる自然エネルギーというものの塊で、この石を中心に木の根のように島全体に広がっている。その龍脈が島中に流れているお陰でこの島は浮いていられることができるのだ』
『なるほど……それでどうしてそんな重要なものを私に?』
『この石の力をお主に分け与えよう』
『そんな事ができるんですか?』
ヴァイオレットが問うと、ドラグニルは石を見つめ逆に問いかけてきた
『この石が何故城の下にあるか分かるか?』
『えっと……人間のものだったとか?』
『少し違うな、この石は元々我等竜族が管理していた。しかし人間によって奪われてしまったのだ』
『人間に……どうして奪われてしまったんですか?』
竜が人間に奪われるようなヘマをするとは思えない
管理するほど大事なものとなれば尚更だ
一体どういう経緯があったのか。ドラグニルは昔の話をし始めた
『我が産まれるよりも遥か大昔、今の人間はおろかこの国にいる竜すらも殆ど知らない話だ。昔の竜族は今のように人間を忌避しておらず友好的だった。そこへ人間が寄ってきて我々は友好を深めていった。そして我々から信用を勝ち取った人間達に当時の竜王はこの龍脈石の管理を人間に任せることにした。しかしそれが大きな過ちだった』
昔の話をするドラグニルからは微かに怒りの感情が漏れ出ていた
『先程の問いの答えだが、この石を体内に取り込むことによって大きな力を得ることができる。我々と友好を深めた昔の人間達もそれを知っていたのだろう。我々の懐に潜り込んでからこの石の力を悪用し多くの同胞の命を奪っていった』
『そんなことが……』
『だが罰が当たったのだろうな。奴等は段々と力を制御できなくなり理性を失い最終的は国ごと自滅していった。愚かなものよ』
『それで二度と奪われないようこんな所に?じゃあその力を取り込んだら私もおかしくなっちゃうんじゃ……』
『体に順応するまで暫く苦しむことにはなるだろうが恐らくその心配はないだろう。お主はその身に精霊を宿しているだろう?精霊がいれば正気でいられるはずだ』
『それじゃあ……』
『しかし力を取り込んだ時の弊害もある』
『弊害というのは?』
正気を失う以外にも問題があるなんて。知らなかっただろうとはいえ昔の人間はよくそんなものに手を出したものだ
だがヴァイオレットも今更引くわけにはいかなった
固唾を呑んでドラグニルからその弊害とやらを聞いた
『龍脈の力を取り込んだら最後。ヴァイオレット、お主は二度と人の姿に戻ることは出来なくなる』
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