父の父
ヘイヴルに案内され竜王と謁見する為に古城へと単身乗り込んだヴァイオレット
今にも崩れそうな城の中を進んでいくと、やがて大きな扉の前へとやってきた
『分かっているとは思うがくれぐれも失礼な態度をとるんじゃないぞ』
『う、うん』
この扉の先には一体どんな竜が待ち構えているのか
ヴァイオレットが一度大きく深呼吸した後ヘイヴルが扉を開けた
するとそこで待っていたのは予想とは違う竜だった
『竜王様、例の人間を連れて参りました』
『ご苦労だったなヘイヴルよ』
玉座がある場所に座っていたのは長い髭を生やした老いた竜だった
頭の中ではもっと威厳のある姿を想像していたので少し拍子抜けしてしまった
だが見た目で判断してはならない。長く生きているという事はそれだけの力量を隠し持っているかもしれない
竜王の姿を見て一瞬気が抜けてしまったヴァイオレットだが、再び気を引き締めて竜王の元へと近づいていく
やがて目の前までやって来ると竜王が口を開いた
『よく来たな人間よ。我が名はドラグニル、この竜の国の王である』
『は、初めまして。ヴァイオレット・カラミティアです』
『ふむ……やはりな』
『?』
まじまじと見てくるドラグニル
老いているとはいえやはり竜王と呼ばれるだけあって佇まいに風格があった
無言のまま長いこと見つめられ居心地悪くしていると、ようやくドラグニルは再び喋りだした
『外にいる時から感じていたがお主、イグニスと似た雰囲気を放っておるな』
『え?おとう……イグニスを知ってるの?……ですか?』
『当然だ。何を隠そうそのイグニスの父がこの私ドラグニルなのだからな』
『え……えー!?』
目の前にいる竜王があのイグニスの父親
イグニスにも親がいるのは当然ではあるが、親が竜の国の王だったなんて誰が思うだろうか
突然明かされた衝撃の事実にヴァイオレットは開いた口が塞がらなかった
『まさかこんな所で会えるなんて……』
イグニスから竜の国の話は聞かされていたが、竜王のことなどは全く話してくれなかった
自分の事をペラペラと話す性格でないのは知っているが、隠し事をするような内容でもない
イグニスが王の息子……あまりにイメージとかけ離れていて話さなかったのが頷ける気がする
『じゃ、じゃあお父さんのお父さんってことになるのか。ということは私のおじいちゃん……』
『貴様!竜王様に向かっておじいちゃんなどと!』
『よいよい。しかしまさかイグニスと縁がある者がここに来るとはな。よければあ奴との話を聞かせてはくれぬか?』
『は、はい!』
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