竜王の使い
ヴァイオレット達の戦いに介入してきた竜によって戦闘は一時中断
先程まで戦っていた竜よりも一回りは小さく一見そこまで強くなさそうに見えたが、二頭の竜はその竜を見た途端態度を変えた
『こんな所に何用か』
『見ての通りこちらは今取り込み中だったのだが』
さっきまでのヴァイオレットに対しての強気な態度とは違い謙った態度で話しかける二頭の竜
ニフリートにもあんな態度だったのに一体どういう事だろうか
『ねぇ、あの竜は何者?さっきの竜達が随分大人しくなったみたいだけど』
『あ奴は確か……あぁそうだヘイヴルだ。この国でいざこざが起きたら取り締まる役を担っていたはずだ』
『あぁだからどっちもあんな感じなのか』
同じ竜を相手に取り締まるということはそれだけの力がないと成り立たない
つまり今目の前にいるヘイヴルという竜はこの竜の国の中でも相当強いということだろう
そんな竜がわざわざ自分達の所にやって来た目的はやはり部外者を排除する為だろうか
再び気を引き締めていつ来られてもいいように相手の動きを警戒していると、ヘイヴルがこちらにゆっくりと近づいてくる
そして目の前にやって来るとヴァイオレットに向かって喋りかけてきた
『竜王様がお前と話をしたいそうだ』
『りゅ、竜王?私と?』
『ついて来い』
竜の国について話は聞いていたヴァイオレットだったが、竜王という名はイグニス達からも聞いたことがなかった
その竜王が自分と話したいという理由はよく分からなかったが、とにかく竜の国への入国が許可されたのは間違いない
ヴァイオレット達はヘイヴルのあとに続いて竜の国へ入ろうとする
しかし二頭の竜がそれを黙っているはずがなかった
『ま、待て!人間を中に入れるというのか!』
『我等は認めんぞ!』
まぁ当然そういう反応になるよねなどと二頭の竜の言葉を聞きながらヘイヴルの様子を窺ってみると、ヘイヴルのプレッシャーが跳ね上がった
『この者達は竜王様のご命令で入国させる。それに逆らうのならそれ相応の覚悟をしろ』
『ぐっ……!』
体格はこの中では一番小さいが、そのプレッシャーの前に二頭の竜達はおろかヴァイオレット達も動くことができなくなった
流石の竜達もそれ以上何か言ってくることはなくなり、ヘイヴルは解き放っていた圧を消して竜の国の方へと向き直る
『早く来い。竜王様を待たせるな』
『え……あっ、待って!』
ヘイヴルに言葉をかけられて正気に戻ったヴァイオレット達はあとを追いかけて竜の国へと入国した
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