不死の竜の力
カラミティが襲撃され多くの犠牲者が出てヴァイオレットが苦しんでいたその頃、一頭の竜が行動を起こそうとしていた
『ちょっと出かけてくるわ』
『まさか助けに行くつもりなのか?』
カラミティを目指し飛び立とうしていたのは白銀の竜バシリッサ
そして呼び止めたのはヴァイオレットの育て親であるイグニスだった
『あら、あなただってヴァイオレットが危なかった時に同じような事をしてたじゃない』
王都でヴァイオレットがやられそうになった時に現れた執事服を身に纏った老齢の男性、その正体はイグニスである
ヴァイオレットにお守りとして渡していた爪、あれは装着した者の身に危険が迫った時に瞬時にその場に助けに行くことができるという代物だった
イグニスはその事を指摘されるとこう返した
『ふん、あれはヴァイオレットの身が危なかったからだ。今回とは状況が違うだろう。それにヴァイオレットが無事であればそれ以外の有象無象がどうなろうと吾輩が知ったことではない』
『あなたはそれでいいかもね。でもヴァイオレットが悲しんでるのにそれを放っておくのは親としてどうなのかしら?』
『むぅ……』
バシリッサの言葉に言い返すことができないイグニス
昔であれば反論されようものならすぐさま暴れていたイグニス、ヴァイオレットと過ごしてきた時間によって多少なりとも変化はあったようだ
『まぁあなたがあそこに行ったところで出来ることなんてないし今回は私に任せておきなさい』
『勝手にしろ。ついでにそのままここから立ち去れ。ヴァイオレットがお前にいて欲しいと言うから居座らせていたのだからここにいる理由はもうないだろう』
『ヴァイオレットの様子を見ることができる魔道具を持っているのが私ってことを忘れているようね』
『ぐぅ……』
それだけ言い残してバシリッサはカラミティを目指して飛び立った
イグニスの時のように瞬時にヴァイオレットのいる場所に行くことはできない
それでも尋常ではない速度、その速度は他の竜を圧倒するほどのものだった
あっという間にカラミティの真上までやってきたバシリッサは亡くなった者達の状態を確認した
『まだ魂は近くを彷徨っているみたいね。これなら大丈夫そう』
バシリッサの固有魔法:蘇生
イグニスが人々に災厄の竜と呼ばれているように、この魔法によってつけられたバシリッサの異名は不死竜
決して死ぬことのない不死の竜、今回その能力をヴァイオレットの仲間達に使用する
死後からかなりの時間が経過し魂と肉体の繋がりが完全に切り離されていたり、そもそも生きる意志のない者は蘇生しようと思っても拒絶されてしまう
先程魂と肉体の繋がりはまだあることは確認した。あとはこの者達に生きる意志があるかどうか
バシリッサがカラミティの上空を飛び翼を羽ばたかせると、白い雪のような綺麗な光がカラミティに降り注いだ
亡くなった者達にその光が落ちると体が淡い光に包まれた
『あとはあなた達次第よ。ヴァイオレット、また会うのは次の機会にね』
ヴァイオレットが寝ている自宅を見つめながらそう言うとバシリッサは飛び去っていった
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