部下を置き去りに
ルージュの傷だらけな姿を見た後、気づけばヴァイオレットは騎士達に襲いかかっていた
『く、くるな!』
『ぜ、全員で動きを止めるんだ!アースバインド!』
『あ、アースバインド!』
ヴァイオレットの動きを止めようと拘束を試みるが、足止めにすらならず足を止めていた者達は次々と殺されていった
カラミティの仲間がやられた時は怒りに震えつつもまだ冷静さを残していたヴァイオレットだが今回はそれの比ではない
全身の血が沸騰したように熱くなり目の前が真っ赤になっていく感覚に陥る
『ヴァ、ヴァイオレット様……』
味方ですらヴァイオレットの姿を見て思わず身震いしてしまう程だった
このまま一人で敵を殲滅させてしまう勢いのヴァイオレット、しかしそこへ介入する者が現れた
『おー、やっとるのー』
『みゅ、ミュゼル団長!ミュゼル団長だ!』
『ご無事だったのですね!』
倒したはずのミュゼルの登場
ヴァイオレットと戦っていた時についた服の損傷や傷は、まるで戦闘なんてなかったかのように綺麗に消えていた
窮地に立たされていた騎士達はミュゼルの登場でこの状況を打破できると希望を湧かせた
『生きてたんだ……なら今度は確実に殺すだけ』
『おっと、悪いがもうお主と戦う気はないぞ。これ以上戦っても無理そうじゃし魔動機竜もそろそろ稼働限界じゃろうから撤退させてもらうとしよう。何やら嫌な気配もしてきたしのう』
ヴァイオレットがいる方向とは別の方向を見ながらそう呟くミュゼル
その方角の先にはニフリート達がいる
各地帯に物資等を運んでもらっていたのだが、こちらの異変に気づいたのかもしれない
その気配をミュゼルはきっと察知したのだろう
『団長!我々も戦線を離脱します!ご助力願えますでしょうか!』
『何を言っとるじゃ?お主らにはまだ最後の仕事が残ってあるじゃろう』
『最後の仕事……?』
『妾が脱出するまでその者を食い止めておけ』
ミュゼルがいれば自分達は助かる
そう思っていたのにミュゼルから告げられた命令に騎士達は呆気に取られていた
『な、何を言っているんですか……それじゃあまるで我々をここに置いて残すと言っているみたいではありませんか……』
『まるでも何もそういう意味で言ったんじゃがの。あっ、魔動機竜だけは回収させてもらうぞ。それじゃあ達者での』
『そ、そんな……』
『逃がすわけないでしょ』
逃げようとしているミュゼルに対しヴァイオレットは攻撃を放つ
だが目の前にいたミュゼルは幻、本体は既に魔動機竜の背に乗っていた
『ではまたのヴァイオレット。次殺り合うのを楽しみにしておるぞ』
それだけ言い残すとミュゼルは魔動機竜と共に転移石を使ってこの場から去っていってしまった
『嘘……だろ……本当に俺達を残して行ったのか』
『終わりだ……』
ミュゼルなしでは勝ち目はなく士気は最早無いに等しい
再び絶望の淵に立たされた騎士達に戦う力は残っておらず、ヴァイオレットはその者達の息の根を止めた
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