幽閉
一年の月日が経ってエリザの身長は少し伸び以前よりも大人の顔つきに変わっていた
そんなエリザの部屋へとやって来たアレクサンドロスは、エリザの様子を見てまず最初に体調の心配をした
エリザはここ最近食事をあまり摂っていないせいか顔色が優れていなかった
『エリザ、体調はどうだ?』
『私は問題ありません。至って健康です』
『なら用意された食事をしっかりと食べるのだ。侍女達がお前が食事を食べていないと心配していたぞ』
『最低限の栄養は摂取していますので大丈夫です』
『そうは思わないから言っているのだ』
エリザがここまで頑なになっているのには理由があった
王都から帰ってきてからエリザはミーシャ達と共にヴァイオレットを陥れた者の存在を突き止めようと秘密裏に動いていたが、それがアレクサンドロスの耳に入ったことでお風呂以外は見張り付きで自室で過ごすという半軟禁状態のようになってしまった
その事から自分の父親含め完全に黒だと理解したエリザは、運ばれてくる料理に毒が入っている可能性を警戒した
致死性の毒までは盛られることはないだろうがここで身動きが取れなくなってしまったら相手の思惑通りになってしまうと考え、必要最低限の食事だけをしてどうにか凌いでいた
アレクサンドロスは態度を変えようとしないエリザに対して続ける
『エリザよ……お前が何を勘違いしているのか知らないがあの者は危険な存在なのだ。放置していたらいずれ大きな災いをもたらすかもしれない。その前にどうにかしなくてはならないのだ』
エリザもそれは知っている。色々と調べているうちに転生者という存在を知り、それがヴァイオレットであるかもしれないということを
あの時見せてもらった列車という乗り物、あれはどの国でも見たことがないもので普通の人間が思いつくような代物ではなかった
転生者は別の世界の知識をこの世界に持ち込んでくるという
そう考えればヴァイオレットがこうして狙われていることにも辻褄が合う
そうと知った後でもエリザはヴァイオレットを助けたいという気持ちは変わらなかった
『……とにかく私はこれから忙しくなる。全てが終わるまでお前はここにいなさい。これは王命だ』
『……お父様、本当に戦いは止められないのですか?』
『あぁ、もう賽は投げられたのだ』
その言葉を最後にアレクサンドロスはエリザの部屋をあとにした
去り際、衛兵達に声をかける
『今まで以上にエリザとその周辺の者達の動向には注意しろ』
『ハッ!』
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