魔動機竜
ヴァイオレット達が着々と町を発展させていく中、エリザのいる王都では密かに戦いの準備が行われていた
『なんとか完成させることが出来ましたね』
『あぁ、コイツを完成させるのに一体どれだけの制作費を割いたことか』
ここは魔道具などを開発する研究所
そこで作られていたのはヴァイオレット達の町を襲う為の兵器
一年前、エリザ達が王都に帰還してきた時から極秘に作られており、他の作業をストップし技術班総出でようやく完成するに至った
完成した兵器を眺めながら作業員達が話していると扉が開かれる音が聞こえてきた
『皆の者ご苦労』
『こ、国王様!』
『例の物が完成したというから拝見したいのだが動かすことはできるか?』
『はい、先程動作確認が済んだところですのでお見せできます』
『では頼む』
突然の国王の来訪に驚きつつも自分達の完成品を披露する為準備に取り掛かる
繋いでいた動力線を外していき機体に異常がないか確認していく
『機体異常なし。魔力充填完了。起動できます』
『よし、魔道機竜起動!』
始動のボタンを押すと止まっていた兵器、魔道機竜の目が光りゆっくりと立ち上がった
その姿は名前の通り竜の姿そのもの。目の前の光景を目撃した国王アレクサンドロスは感嘆の声を上げた
『おぉ、これだけの巨体をたった一年で動かせるようにできたか。でかしたぞ』
『ありがとうございます』
『この魔道機竜といったか。この姿ということはやはり飛ぶこともできるのか』
『勿論です。この魔道機竜には実際の竜の血が使われており充填した魔力に反応し力を行使できます。竜の生態を研究して作りましたので竜そのものの動きを再現できていると自負しております』
『ほぉ、そこまでのものに仕上げたか』
『これだけの完成度にすることができたのは魔法騎士団のミュゼル団長のお陰です』
この魔道機竜を完成させることができたのはミュゼルが竜を倒してきたからである
ヴァイオレットが脱走したあの日、ミュゼルがその場にいなかったのはそれが理由であった
『更にこの機竜には本来の竜にはない特殊な機能を付け加えております』
『それは一体なんだ?』
『今からそちらをお見せします』
研究員の一人が手で合図を送ると数人が魔道機竜の前に立ち魔法を放った
魔法はそのまま機竜に直撃するかに思えたが、手前で勢いが止まり魔法を術者の方へと跳ね返した
『今のは?』
『あれは魔法反射です。機竜のボディにはミスリル鉱石を使用している為物理は勿論魔法全般はこの機竜にまず効きません』
『素晴らしい!これがあれば怖いものはないな』
『ただ一つだけ問題が……これだけの機体を動かすには相当な魔力量が必要になる上動かすことができるのはせいぜい数時間程度が限界という点です。竜本来の機動力を損なわずに作るにはそれが限界でした』
『なるほど、それでもこれだけの機能を備えているのだ。よくやってくれたな』
使用制限があることを踏まえても十分な出来であることには変わりない
アレクサンドロスは満足気な表情で研究所をあとにした
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