浴場にて
初日のレクリエーションを終え寮へと帰ってきたヴァイオレット達は寮生だけが使える大浴場へとやってきた
『ここのお風呂広くていいねぇ♪』
『ちょっとこんな所で泳がないでよ』
『ねえねぇどっちが長く潜れるか勝負しようよ』
『いい歳してそんな事するわけないでしょ』
『あ~私に負けるのが怖いんだ~』
『はっ?そんなわけないでしょ。いいわ、その勝負受けて立ってあげる』
ミーシャは案外チョロい、ヴァイオレットはこうすれば誘いに乗ってくることを覚えた
二人で勝負しながら湯舟に浸かっていると、脱衣所の方の扉が開き何人の生徒が浴場へとやってきた
楽し気に話しながら体を洗い、それが終わるとこちらに近づいてくる
ヴァイオレット達の存在に気づくとその中の一人が声をかけてきた
『あら、あなたは……隣いいかしら』
『うん、いいよー』
『あなたさっきのレクリエーションで一番上まで飛んでいた子よね。あっ私ルナって言うの、よろしくね』
『よろしくー、ヴァイオレットだよ。そっちの子達は?』
『私はレイナよ』
『ボクはイースだ。よろしくな』
『ボク?』
『あぁこの子見た目と口調は男の子っぽいけどちゃんと女の子だから安心して』
『ルナ、それはボクに喧嘩を売ってるってことでいいんだよなぁ?』
『賑やかな子達だねぇ。ねっミーシャちゃん』
言い争う姿をミーシャと共に眺めているとミーシャが突如湯舟から上がろうとし始めた
『私先に上がるわね』
『え?もう上がっちゃうの?』
『私がいたらお邪魔だと思うから』
『あー獣人ちゃん、ミーシャさんでいいのかな?別に気遣わなくていいよ。私獣人とかそういうの気にしないから』
『ボクも別に気にしないよ』
『私も』
『そういうわけだからさ。あっ、ミーシャさんが嫌だったら仕方ないけど』
『……そういうことなら』
三人の言葉でミーシャは思いとどまり再び浴槽の中へ
この女性達は教室で絡んできた男子生徒とは違うようだ
『私達三人は幼馴染でね、アニマっていう町から来たんだ』
『アニマって確か国境沿いにある獣王国と隣接している町よね。そう、だから獣人慣れしてるのね』
『幼馴染かぁ、いいなぁ。三人共同じ学校だなんて仲良しなんだね!』
『腐れ縁みたいなもんだけどな。私は風の魔法が得意でルナは氷、レイナは光の魔法が得意なんだ。アンタ達は?』
『私は……霧の魔法かしら。ヴァイオレットは?』
『私?私は特に得意な魔法があるってわけじゃないかなぁ。あっでも一度見ればどんな魔法も使えるようになるよ』
各々が得意な魔法の話になりヴァイオレットは自分の特技をありのまま話した
それを聞いていた四人は一瞬沈黙した後笑い声が上げた
『あっはははは!面白いこと言うね!』
『全魔法を使えるってヴァイオレット、あなた魔法がどれだけあるのか知っているの?』
『さぁ……たくさん?』
『そうたくさんよ、攻撃系の魔法だけでも千種類以上ある。それだけの数の魔法が使える人なんて存在しないわ。魔法には相性というのもあるしね』
『レイナだったら闇の魔法が全く使えなかったりねぇ』
『むー、本当に一度見れば使えるようになるのにー』
口を膨らませながら反論するが、ヴァイオレットの言うことは余程荒唐無稽な話らしく誰も本気で取り合ってくれはしなかった
『それより話は変わるんだけどさ、今年はあの方も入学していたのね』
『あの方って?』
『今年の入学試験をトップで合格したこの国の第一王女エリザ様よ。一番前の席にいたでしょ』
『王女様……』
思い返してみるがそもそも王女の姿を見た事がないヴァイオレットには誰が王女だったか見当もつかなかった
王女といったらこの国のトップに位置する人物、王族に粗相をしようものなら極刑も有り得るらしい
逃げる位は容易だろうがそうすると学校にいられなくなってしまうので気をつけなくてはならない
でもチャンスがあれば友達になれたらなとは思う
『まさか一緒のクラスになるなんてねぇ、お声をかけさせて頂きたいけど周りには貴族達が王女様に群がってて話せる機会なんてないだろうしなぁ』
『そういえば気づいたんだけどさ、ヴァイオレットと王女様って髪の色一緒よね』
『目の色もじゃない?』
『そうなの?』
『赤い髪ってあまり見かけない髪色よね。もしかして親戚だったり?』
『それはないわね、とてもじゃないけどヴァイオレットは王族とか貴族って柄じゃないでしょう』
『えーひどーい!』
そんな話をしている横でレイナは一人黙りこくっていた
視線の先にはヴァイオレット、それに気づいたヴァイオレット本人が話しかける
『レイナちゃんどうしたの?私の体なんか変?』
『いやそんな事ないわ。とても綺麗だと思って……』
『ヴァイオレット気をつけろ~。レイナはそっちの気があるからな』
『黙りなさいイース。私はただ可愛い子の体が気になるだけよ』
『言い逃れできてねぇぞ』
『私の体に興味あるの?』
『その言い方はあれだけど……端的に言うとそうなるわね』
『じゃあ触ってみる?』
『えっいいの?じゃ、じゃあお言葉に甘えて』
体に興味があるというレイナに身を委ねる
レイナは恐る恐る肩へと手を伸ばすと優しい手つきでヴァイオレットの体を触りだし、そしてその手は徐々に下の方へと移動していく
『くふふふ……!なんかくすぐったーい』
『一目見た時から思ってたけどやっぱり張りと艶のあるこの体……最高。はぁ……はぁ……』
『それ以上はアウトよ。あなた夢中に目が獣になってるわ』
『離しなさい!この体は私が追い求めていた理想郷なのよ!』
『おい!こいつおかしな事言い始めたぞ!』
『あはは、レイナ面白いねー』
『言ってる場合か!狙われてるのお前だからな!』
その後興奮し我を忘れたレイナはイース達に拘束されたことで落ち着きを取り戻し、取り乱したことを謝罪して浴場での談笑を終えた
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