食の向上を求めて
ヴァイオレットのいるカラミティでは日夜都市開発が行われていた
その甲斐もあり衣食住の住は初期の頃とは見違える程快適になった
一つが快適になるとそれに合わせて他のもののレベルも上げたくなってしまう
『はぁ……』
『どうしたのヴァイオレット、食事中に溜息なんて珍しいね。その肉美味しくなかったの?』
『いやお肉は美味しいんだけどね。王都で食べた料理みたいなのが食べたくなっちゃって』
幼い頃から食べてきた魔物の肉、そのまま食べても勿論美味しかったが王都で食べた料理の味が忘れられないヴァイオレット
『私達がいつも食べてるものって大体そのままだったり生のものを焼いただけでなんというか……料理というにはちょっと怪しいじゃない?』
『まぁそうかもね、でも皆それで満足してるし』
『それは皆があの美味しさを知らないからだよ。あのレベルとまではいかなくてももっと調味料になるものってないかなぁ……ちょっと探してくる!』
『あっ!待ってよヴァイオレット!』
やることがなくて暇だったヴァイオレットは食の発展を求め森を彷徨った
今ある調味料といえるものは塩と柑橘系の果物
海に行けば塩は幾らでも手に入れられるし果物の方も酸味が強くて他の生き物は手を出さないのでいくらでも生っている
だがそれだけでは物足りない。ヴァイオレットは王都で食べた料理の中で最も印象に残っていた物の味を思い出そうと頭を捻った
『うーん……あれは黄色くてつぶつぶみたいのがあってそれでちょっと辛さと甘さもあってぇ……あ、ちょっと酸味もあったかも。うっ、思い出したら涎が……一回しか食べてなくてまた食べようと思ってたんだけど結局無理だったんだよねぇ』
『一回しか食べてないのにそんなに覚えてるんだね』
『勉強した内容は全然覚えてないけど食べ物に関しては記憶力がいいんだよね』
『それってどうなの……』
ルージュの言葉を他所に再び頭を悩ませるヴァイオレット
そこにシオリが語りかけてくる
(ねぇ、それってマスタードじゃない?)
(マスタード?)
(私の世界にも似たようなものがあったの)
(じゃあどうすれば作れるか分かる?)
(なんとなくは分かるけど……ここにそんな都合良く材料が揃ってるとは限らないでしょ)
(いや、私は材料を見つけるまで諦めないよ!これだけ広い大陸なんだから探せば見つかるはずだよ!)
(たかが調味料を作るのに大陸中を探すつもりなの!?)
命懸けでクラーケンを突破したエリザ達とは裏腹に、ヴァイオレットは食の向上を求め奔走していたのであった
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