作戦開始
クラーケンと二度目の邂逅を果たしたエリザ達
一度会敵してどの程度のものか知っているつもりではあったが、いざ実際にこうして相対するとその圧倒的な大きさは何度見ても慣れることはないと実感した
しかし今回もクラーケンの方から襲ってくる様子はなく、ただこちらを監視するようにジッと見てくるだけだった
『やっぱり襲ってくる気配はないわね』
『皆さん、話した通りにいきましょう』
『了解』
エリザの号令で四人は持ってきていた二色の樽のうち片方の樽を運び出しクラーケンに向かって放り投げていく
そしてそれをアレクが魔法で樽を次々と破壊していく。すると壊された樽の中に入っていた液体が雨のようにクラーケンに降りかかる
『赤い液体……それにこの匂い……もしかして酒か?』
『はい、それもかなり強いお酒です』
エリザ達が持参してきたのはどんな酒豪でもそのまま飲むことができないと言われている強いお酒
通常一滴に対し大ジョッキ一杯の水で薄めないといけない程濃縮された果実酒の原液
誤って飲めば毒にもなってしまうようなお酒をクラーケンに直接浴びせその隙に攻撃しようという算段である
とはいえいくら強力なお酒とはいえそれでクラーケンを完全に封じれるとは思っていない
動きを鈍らせることができれば上出来だろう
『どうでしょう、何か変化はありましたかね?』
『な、なんだか動きが鈍く……なったようななってないような?』
『元から動いてないからなんとも言えないわね。でも攻撃してくる気配は今のところないみたい』
クラーケンが相手だと効いているのか効いていないのかハッキリしない
そこでミーシャが意を決して行動を起こすことにした
『このまま待っていても始まらないし予定通り行くわ』
『気をつけて下さいミーシャさん。私達は援護します』
そう言ってミーシャは船を飛び出しクラーケンの触手に飛び乗り先端の方へと向かって走り出した
正常であれば何かしらのアクションを起こしてくるはずのクラーケンはミーシャが体に乗っても何の反応も示さなかった
『やはり効いているみたいですね』
『ミーシャさん頑張って下さい!』
足場の悪い場所を勢いよく駆け上がっていくミーシャ
トランス:ビーストモードを使って鋭い爪で触手に食い込ませて走っている
やがて先端部分の辺りに到着すると、その鋭い爪を駆使して触手に連撃を浴びせていく
そこでようやくクラーケンは自分が何かされていることに気づいたのか、ミーシャが攻撃をしている箇所に向けて別の触手をぶつけようとする
『と、止まって……!』
その声に反応し触手のうごきが止まる。シェリアの呪詛魔法だ
だがクラーケン相手ではそれも数秒が限界、その間にミーシャがギリギリまで攻撃して呪詛が解ける頃に離脱した
『ちょっとだけど傷がついたわ!』
『お願いしますミリアーナさん!』
『ウインドブラスト!』
ミーシャが離れたことを確認すると攻撃している間に準備していたもう片方の樽をミリアーナが風の魔法に乗せて傷をつけた触手の元へと誘導、そこにエリザが続く
『ファイアストーム!』
ミリアーナが繰り出したウインドブラストに重ねるように火の魔法を繰り出し炎の竜巻を作り出す
樽が触手の元に届いた頃にその火も届き、樽に火がついたその瞬間に強烈な爆発が発生した
『うぉぉっ!?』
凄まじい爆風が起こり船を激しく揺らす
もう片方の樽の中身は火薬、予め傷をつけた場所なら爆発で触手を吹き飛ばせるかもしれないと思いこの作戦に取り入れた
煙でよく見えずどうなったのかと目を凝らしていると、船床に物体が落下してきた
『お、おぉ!これがクラーケンの触手!』
どうやら運良く船に落ちてきてくれたようだ
これで目的は達成した。これ以上この場に留まるのは危険なのでタッカに離脱するよう促す
『タッカさん!船を出して下さい』
『任せろ、望みどおりお前達を連れて行ってやるよ』
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