二度目の出航
タッカとの交換条件で船に乗せてもらえることとなったエリザ達は翌日準備を済ませてタッカの船が停泊している場所にやって来た
『おはようございますタッカさん、準備はどうですか』
『あぁバッチリだ』
タッカの船は漁に出る為の船と違い砲門がいくつか装備されていた
とはいえ個人が所有している船なのでクラーケンの触手を吹き飛ばす程の威力はなさそうだ
船員もタッカのみなので船を出すのにミーシャ達も手伝うこととなった
『それよりそっちの荷車はなんだ?二つの色に分けられているようだが随分と大量の樽を積んでいるんだな』
『これはクラーケンに使うものです』
『それ全部か。一体どんな使い方をするのか知らんがそれで触手をどうにかできるのならなんでもいい。さっさと積み込んで出るぞ』
昨日買っておいた樽を船へと積み終えると錨を上げエリザ達は二度目の出航をした
今回の作戦で必要なものを購入するのに持参していたお金を殆ど使ってしまったので、これが失敗すれば港に滞在し続けるのは厳しくなり王都に帰還をしなくてはならなくなる
地図を見ながら前回の航路を辿るようエリザがタッカに話し終えたところでアレクが耳打ちしてくる
『エリザ様、もし今回の作戦が失敗した場合今後ヴァイオレットさんの事はどうか諦めて下さい』
『アレク』
『あなたは我が国の王女、エリザ様の強い要望で今回は特別に許可を頂きましたが本来一人の為にあなたの身を危険に晒すわけにはいけないのです』
『ですがそうなったらミリアーナさんが』
『ミリアーナさんは私が責任を持ってどうにかします』
そう話すアレクの目はエリザを真っ直ぐに見ていた
幼い頃から従者としてずっと傍らにいたアレク、その言葉を受けてエリザは言葉を返す
『分かりました。ですがそれは今回の作戦が失敗したら、ですよね。私は結果が出るまでは決して諦めませんよ』
『……エリザ様ならそう言うと思いました。勿論私もできる限りのことはさせていただきます』
そう言って軽く微笑むとアレクはエリザの元を離れていった
一発勝負で果たして上手くいくか、クラーケンと戦おうとしている時点で成功より失敗の確率の方が高いだろう
それでもその先にいるヴァイオレットに会いに行く為エリザ達はクラーケンが現れた場所まで航走させた
『もうそろそろ前回クラーケンが出現した場所辺りのはずです。皆さん警戒して下さい』
クラーケンの生息域まで来ると空気が一変し張り詰めていく
船の真下から出てこられてしまったら出現と同時に船が沈められ作戦どころではなくなる
海中に警戒しながらクラーケンを探すことおよそ一時間、その時は突如やってくる
『き、来ました……!く、クラーケンです……!』
シェリアの指差す方に全員が集まってくると海面からクラーケンがゆっくりと姿を現した
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