最後の頼み綱
クラーケンという思わぬ壁にぶつかってしまったエリザ達は新たに船を出してくれる人物を探していた
しかし前回乗せてもらった船の船員が他の者達にクラーケンの存在を明かしてしまった為エリザ達の要望を聞いてくれるような者は誰もいなかった
『困りましたね……また振り出しに戻ってしまいました』
『自分達で行こうにも船を買うような大金は荷物になるので城から持参してませんしかといって小舟で行こうものならクラーケンにやられてしまいますしどうしたものでしょうか』
『どうする?一回引き返して……ってそれは難しいわね』
『あ、あのぉ……私聞いたんですけど灯台のところに住んでるおじさんがいるらしいんですが……その人がどうやら船を持ってるっていう話だそうです』
『灯台……その人のところにいけば船を貸してもらえるでしょうか』
『あっ……でもちょっと変わった人みたいで……』
『とにかく可能性があるなら行くだけ行ってみましょ』
シェリアの情報を元にエリザ達は灯台がある場所を目指した
灯台と家が一体になったような場所にその人物はいるという
目的地に着き堅牢そうな扉を見つけるとエリザがノックし声をかける
『ごめん下さい。どなたかいらっしゃいませんか?』
何度か訪ねてみるも全く返事がない
中から人の気配もしない。シェリアの話では滅多に外に出てくることはないみたいな事を話していたそうだが外出中だったのかもしれない
『留守かしら?』
『出直しますか?』
一旦帰ろうとしたその時、内側から扉の覗き窓が開く
そこからエリザ達をジッと見つめてくる中年男性の顔が現れエリザ達に喋りかけてきた
『……なんだお前さん達は』
『あっすみません、こちらで船を貸して頂ける方がいると聞いて来たんですが……』
『……船なんて持っとらん』
『え、いやでも……』
『用が済んだならさっさと帰れ』
『あ!話だけでも聞いてくれませんか!』
こちらの用件を伝えると短い受け答えだけしてまた覗き窓を閉めてしまった
取り付く島もなく門前払いされてしまったエリザ達はここだけが頼りだったので諦めずに扉を叩き話をしてもらえるよう頼み続けたが、それ以降全く反応がなくなってしまった
『今日のところは一度出直した方がいいかもしれませんね』
『こんなんじゃクラーケンを突破するのもいつになるか分からないわね』
一旦諦めて後日また訪ねることにし宿に帰ろう灯台をあとにしようとしたエリザ達、しかし今まで全く反応を示さなかった男が突然扉を開けて呼び止めてきた
『ちょっと待て。お前達今クラーケンと言ったか?』
『え?は、はい言いましたけど』
『それならそうと早く言え。入れ』
『あ、ありがとうございます!』
どうやらクラーケンという存在が彼の態度を変えさせたようだ
一先ず話を聞いてくれそうな事に安堵しエリザ達は家の中に入っていった
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