壊滅
ユリウス達が死の森に入ってからおよそ数分、まだ先程入ってきた場所が視界で確認できる程度の距離までしか進んでいないが既に兵士達の息は乱れつつあった
過酷な訓練を乗り越えて兵士となった者達でもいつどこから魔物が現れるかも分からない場所に身を置き続けるには精神と共に相当な体力を消費なければならなかった
一方ユリウスはというと他の兵士達と比べてその影響を全く受けていなかった
『全く情けない奴等だ。ん?なんだそれは?』
『これですか?これは魔物除けのお香です。これを持っている間は完全ではないですが魔物は近寄ってくることはありません。ただ有効時間がありますのでどんな事があってもこれが切れる前に森を出ましょう』
『それはどれくらいだ?』
『大体二、三時間が限界かと……』
『ならグズグズはしていられないな。さっさと先に進むぞ』
『で、殿下!この森は未だ未確認の魔物が多いので迂闊に進んではいけません!』
ユリウスを守る為の布陣を敷いているのにそれを無視して先頭の方へとズカズカ歩いていくユリウス、その様子を見ていた兵士達の口からは溜息が漏れる
『はぁ……こんな調子で本当に目的の人物を見つけることなんてできるのか……ん?なぁおい最後尾にいた奴を知らないか?』
『はっ?お前が最後尾じゃないのか?』
最後尾にいたはずの兵士が突如姿を消し近くにいた兵士達が辺りを見回す
すると数メートル後方で動く何かを見つける。それは最後尾にいた兵士の姿だった
『なんだお前、そんなところで何をしてたんだ?』
『まさか用を足しに行ってたのか?こんな場所で度胸あるな』
『た……す……』
『えっ?なんだ?』
『たす……けて……』
様子がおかしいことに気づき茂みの方から出てくる兵士を警戒していると下半身が動く植物に食われている最中だった
『魔物だ!魔物が現れたぞ!』
『一体だけなら後方部隊で始末しろ!』
『ま、待て!右からも来たぞ!』
『左……前からもだ!』
『魔物除けのお香が効いていない!?どういうことだ!』
ここに来る前にお香の効果は確認済みなので効いていないわけではないはず。死の森にいる魔物には効果がないと気づいた頃には無数の魔物に囲まれていた
倒しても次から次へとやってくる魔物の群れ。用意していた回復アイテム等を駆使して対抗するがそれでも一人、また一人と魔物の餌食となっていった
『ユリウス様!これ以上は危険です!撤退しましょう!』
『チッ……!仕方ない撤退だ!全員撤退しろ!』
僅か数百メートル程度で死の森から撤退することとなったユリウス達は命からがら森の外へと出ることができた
死の森を出た後魔物が追ってくることはなかった
しかし多くの犠牲が出た。ユリウスが率いる部隊は当初の三分の一の数だけとなり王都への帰還を余儀なくされた
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