死の森へ
オストンでヴァイオレットの手がかりを得たユリウス達捜索部隊はその街を拠点に周辺を探して回った
だがどこを探してもヴァイオレットの目撃情報や親類縁者だとされる者を見つけることは出来ず、捜索は再び難航していた
『ちっ……おい、魔力はもう十分に回復しただろう。犯人の痕跡を見つけ出すんだ』
『は、はい』
ユリウスの指示でエルフはヴァイオレットの痕跡の追跡を再度試みる。しかし暫くするとエルフは突然苦しみだした
『うっ……!』
『おい何をやっている。さっさと探さないか』
『はぁはぁ……申し訳ありません。痕跡を辿ろうとしたんですがどうやら何者かに妨害されたみたいで……』
『何?おい、この先には何があるんだ?』
『今地図をお持ち致します』
兵士が持ってきた地図を広げ確認するとエルフが追跡を試みた先には広大な森があり、そこは人が出入りすることが出来ない死の森と呼ばれている場所だった
『おい、ここは死の森じゃないか。こんな場所に犯人は逃げ込んだというのか?』
『わ、分かりません……ですが途中までですが痕跡その方向に残っているのは確かです……』
そう告げてくるエルフの体は小刻みに震えていた
これまでとは明らかに違う様子にユリウスは死の森に何かあるのではという予感がしていた
『よし、この森に行ってみるぞ』
『殿下お待ちを。流石にこの少人数で死の森に入るのは危険すぎます。ここの森は十年以上前から魔物が活発化していて森に入った者は誰も帰って来なかったと聞いています。御身に何かあってはいけませんのでここは一度王都に戻った方が良いかと具申致します』
『お、恐れながら私も……あそこにはおぞましい何かが潜んでいるように思います』
『奴隷風情がこの俺に意見をするな。それに決めるのはお前達ではなくこの私だ。このような事で怖気づいていては一国の主など務まるわけがないだろう』
『で、でしたらせめて街でできる限りの準備を。今のままではいざという時殿下をお守りすることができません』
『……いいだろう。では準備を整え明朝この街を発つぞ』
兵力が明らかに足りない状態で森に入るのは危険極まりない。どうにか考え直してもらうようユリウスに何度も進言したが、一度言い出したら自分の言葉を曲げようとしないユリウスには何を言っても無駄だった
兵士達は街で食料の確保や身を守るアイテムなど最大限の準備をし、翌朝死の森を目指した
死の森に到着するとそこは薄暗く、森の奥からは魔物の奇声のようなものがひっきりなしに聞こえてきた
『不気味な森だな……お前達警戒を怠るなよ』
『は、ハッ……』
今すぐにでも帰りたいという気持ちを抱きつつ、兵士達はユリウスの指示に従い森の中へと入っていった
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