手がかり
翌朝、ユリウス達は再びエルフの力を利用してヴァイオレットの捜索を行いオストンという街にやって来ていた
国の端っこにある街でここより先は小さな村しかない場所でここでヴァイオレットの情報を得られなければ徒労に終わってしまう
わざわざ父親に直談判までしたのに何の成果も得ずに王都に帰ってきたら笑われるのがオチ、ユリウスはなんとしても情報を得ようと兵士達に虱潰しで街の人達に話を聞いてくるよう命令した
『クソッ、やはり異民族の怪しげな魔法なんて当てにするべきじゃなかったか?』
次期国王として少しでも実績を残し父親に認められようと今回の捜索の任に買って出たユリウス
正直言って姉エリザが襲われた件に関してはそこまで怒りはなく、寧ろ死んでくれた方が好都合とさえ思っていた
国王の臣下の中には第一王子であるユリウスではなく、文武両道なエリザを女王として王位に就かせた方がいいのではないかという声が上がっているのを耳にしたことがある
父であるアレクサンドロスはユリウスを王位にと思っているようだが、そんな誰かに用意されて座る玉座などに価値はない
周り者達全員を納得させて王にならないとユリウスは気が済まないと考えていた
その為にも今回の件でなんとしてでも功績を残す必要があった
苛立ちを募らせながら兵士達の報告を待つ。すると一人の兵士がユリウスの元にやってきた
『殿下、例の者と接触したことがあるという老人を見つけました』
『なに?本当か、すぐに連れてこい』
兵士の言葉を聞いたユリウスは目撃者を自分の元に連れてくるよう命じる
やってきた老人はユリウスの前に来ると跪き覚えていることを包み隠さず全て明かした
『ふむ、話は分かった、それでそれはいつの事なんだ』
『もう半年位前になるかと。話したのもその一度だけなのでどこから来たかまでは……』
『そうか、情報提供感謝する。少ないがこれは謝礼だ。受け取れ』
そう言うと老人に小袋一杯に入れられた金銭を兵士に渡すよう命じる
老人はあまりの大金に受け取りを拒否したが、ユリウスはケチな奴だと思われることを嫌い半ば無理矢理渡した
『ようやく手がかりを得ることができたな。この付近の村を調べるんだ。犯人の自宅があるかもしれないからな』
『ハッ』
『おいエルフ、犯人の痕跡を調べろ』
『も、申し訳ありません。今日はもう魔力が残り僅かで……』
『ちっ……まぁいい。犯人には着実に近づいていってるはずだ。必ず捕まえてこの手で制裁を下してやる』
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