一騎打ちの結末
二フリートの魔法暴食がヴァイオレットを襲う
二フリートの固有魔法暴食は相手の魔法を食らうことで自身の魔力に変換、暴食をくらった相手はその魔法が使えなくなってしまうという効果がある
ただこの魔法には発動条件がある。それは対象よりも魔力量が上回っていなければいけないということ
竜の魔力量を上回る存在なんて他種族にいはしない。しかし目の前にいる一人の人間が二フリートの常識を覆した
『……ん?特に何か変わった感じはしないけど』
『馬鹿な、まさかこんな小娘の方が我より魔力量が多いとでもいうのか?』
『どんな魔法かよく分からなかったけど一番怖かった魔法は私には効かないみたいだね。良かった』
二フリートはこれまで自分よりも魔力量が多い存在がいるとしたらそれは自身と同じ竜種しか存在しないと思っていた
実際千年以上生きてきて竜種以外でそういった存在を知っているのは唯一人のみ。その人物でさえ眉唾物だと思っていたがヴァイオレットを見てその認識を改めた
しかしそれまで全てにおいて自分よりも劣っていると思っていた人間相手に負けている部分があったという事実はそう簡単には受け入れることはできなかった
『ええい!我がこんな小娘に負けるなどあってはならないのだ!』
『さっきと比べて動きが散慢だね。こっちもそろそろ時間が迫ってるし次で終わりにしよ』
『望むところだ。貴様の骸を奴の元に送ってやろうかと思っていたがとうそんなことなどどうでもいい。我の全力をもって貴様を塵も残さず消し去ってやる!』
互いに地面に降り立ち渾身の一撃を放つ準備に入る
今の状態なら竜の息吹でも勝てるだろうが確実に相手を倒すにはそれよりも威力の強いブレスが有効、普段の力を抑えている状態では使用は控えていたが今の状態であればきっと使えるはずだ
普段よりも長い溜めから放つ一段階上のブレス、それで二フリートを圧倒する
『消えろ!竜の咆哮!』
『竜焔熱光線!』
両者の凄まじい威力のブレスが衝突、その衝撃によって周辺の木々が吹き飛んでいき地形までもが変化していく
それが段々と観戦していたルージュ達に迫ってきて避難しなくてはいけない事態になった
『わわっ!こっちまで来るよ!逃げろ逃げろ!』
『こんなの巻き添えくらったら一瞬でお陀仏だ!』
必死に逃げるルージュ達を他所に最後の対決がもうすぐ終わりを迎えようとする
ヴァイオレットのブレスに徐々に押され始め焦りの色を見せ始める二フリート
全力で放ったブレスでさえも負けてしまったら……そんな想いが頭をよぎるがそれを振り払って必死に抵抗する
しかしそれでも依然押され続ける。そこでヴァイオレットとのどうにもならない差を感じた二フリートの脳裏にかつてイグニスと戦い敗北した時の光景が蘇った
その次の瞬間にはヴァイオレットのブレスに完全に押し負け飲み込まれてしまった
周囲の木々は全て消し飛び元の地形はもう見る影もない
殆どの者であれは跡形も無くなっているだろうが二フリートは流石竜だけあって頑丈で傷を負ってはいるもののまだ息はあった
『あってはならない……我が人間に負けるなどあってはならないの……だ』
『はぁはぁ……だから私はただの人間じゃないって。イグニスの娘ヴァイオレット・カラミティアだよ』
そこでちょうど発動させていた魔力全解放の効果が切れる
文字通り全力を出し切ることで翡翠竜二フリートを負かしたヴァイオレットであった
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